東京農業大学第三高等学校付属中学校に湯澤講師を派遣しました


2017年6月9日、東京農業大学第三高等学校付属中学校に湯澤三郎講師を派遣しました。中学1年~3年生、180人を対象に「世界のどこかで、思い切り自分らしく!~キャリア教育と国際感覚~」というテーマで講演を行いました。

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湯澤講師略歴: 1940年  横浜生まれ。 栄光学園中高校を経て早大政経学部’63年卒。日本貿易振興会(ジェトロ)入会。米州課長、海外調査部長等を経て理事就任。この間、スペイン(研修)、エルサルバドル、ペルー(現JBIC出向)、米国(ロサンゼルス)、ブラジル駐在。理事退任後、在エルサルバドル特命全権大使(1999~2003) 振興センター チーフアドバイザー)を経て、2011年4月から(一財)国際貿易投資研究所専務理事兼世界経済評論編集長。JICA客員専門員。対エチオピア政府との政策対話参加(5回渡航)。目下3年計画の対アフリカ・中南米・アジア向けJICA輸出振興研修講師。

以下、湯澤講師の出講報告です。

通称農大三中の神山教頭先生のお話では、「キャリア教育と国際感覚」について校外の講師探しでインターネットをナビゲートして、偶々「国際人をめざす会」を見つけたと伺いました。見ず知らずのNPOですから、会の背景や講師の話の内容には少なからずの心配をされたようです。

池袋から東武東上線快速で50分。車窓の山の緑と稲田に心弾む思いで到着。タクシーで中学に向かいました。想像以上に広々としたキャンパスに緑の風が涼しく通り抜けます。榎本武揚の胸像がありました。東京農大の創立者だと伺いました。神山教頭先生のお話では、生徒の減少は待ったなしの問題になっているようです。会場は食堂で既に中学1年から3年まで180名余りの生徒さんが着席し、3人の司会進行係の生徒さんが待っていました。私の紹介も生徒さんがしてくれます。

今日のお話の題は「世界のどこかで、思い切り自分らしく!~キャリア教育と国際感覚~」です。大筋は次のとおりお話ししました。

まず日本の急速な国際化の状況から始めました。

訪日外国人は2400万人強、在留外国人はその1割の238万人。国内の6人に一人が外国人だという勘定になります。飲食店・飲み屋では外国人の働く姿は普通になりました。大学でも前列の席をとるのは外国人留学生という例を多く聞くし、熱心に質問するのもその留学生だとも聞いています。日本はこれから少子高齢化が進みますから、外国人は国内でもっと増えるでしょう。会社でも同じで、外国人の方が一般的に熱心でやる気満々。日本の若者はこれから国内でも外国人と競争する機会がどんどん増えて行きます。

訪日外国人が帰国後語る日本の印象を聞いて、日本へ旅行する外国人が増えています。「日本は清潔、安全、安心、正確、親切、便利、美味しい・・・・」等々実際に経験して目を丸くして「ほんとだ!」と驚いて帰ってゆき、またその評判で訪れる人が増えます。1昨年より440万人増えました。目標の3000万人はオリンピック前に達成するでしょう。こうした外国人の驚きは、今に始まったことではなく、江戸時代の末から明治初期にかけて来日した外国人が、異口同音に書き残しています。日本は驚きだ、日本人はすごいぞというわけです。

今海外の寿司店は3万店強、和食店はほぼ9万店。日本食を食べることがステータスのようになっています。私が初めて海外に行った70年代初めは、アメリカ人が描く典型的日本人像は、「小柄で出っ歯、カメラを肩に下げて笑うと出っ歯に黒い海苔がくっついている」という漫画化された姿で、半ば冗談話の対象でした。でも今やお寿司屋さんなどは、エリートが出入りするステータスの高いレストランになっています。アニメが果たしている役割も大きいです。10年ほど前の欧州の放映リストをご覧になるとわかると思います。アニメの話で世界の若者とすぐ会話が弾みます。

日本製品、ことに日本車の品質の高さも高い評判に貢献しています。昨年10月のコンシューマーレポート誌(アメリカ)は10車種のトップブランドを選定しましたが、そのうち7種で日本車が選ばれました。アメリカ車は1種だけでした。こうした日本車の信頼性は今始まったものではなく、私がロサンゼルスに駐在した91~94年当時の経験もそうでした。91年の赴任時に私は好奇心からビュイック・センチュリーというGM製のアメ車を1万5000ドルで買い、家内には9700ドルでホンダシビックを買いました。その3年後、帰任時に売れた値段は、家内の日本車より5割も高く買ったアメ車は、驚いたことにホンダより3000ドル近く安かったのです。日本車への信頼は今も揺るぎません。アメリカ人がアメ車より日本車を買うはずだと良くわかりました。

この背景には詳しくはお話しする余裕がありませんが、80年代に始まった企業の「カイゼン」運動があります。ムリ、ムダ、ムラを徹底的に見つけてカイゼンして究極のお客様の満足を図るという運動です。アメリカの企業も真似してきましたが、結果はまだまだ。その証拠にアメ車は国内では殆ど見かけません。90年代に政府が全国的にアメリカ製品輸入促進運動を展開したのですが。

日本と日本人の評判はここ数十年で格段に高まっています。そういう「日本人らしさ」とは一体何でしょうか。歴史的にみると、よく言われるところですが、まとめて言えば神社・寺院、信仰、禅、歌舞音局、書画工芸武士道、茶道・華道等々。国民性では、控えめ、あいまい、工夫好き、好奇心家、集団志向、潔癖、外聞懸念、恥・・・ 。ビジネスでは、お上意識、ボトムアップ、横並び、前例、集団志向、人情付き合い、人情経営、新製品指向、人づくり指向、お家意識・・・・

ざっと挙げるとこういうことになりますが、さらに自分なりに考えて追加・修正してみてください。色々とあげたので列挙するのも大変でしょうから、簡潔に易しくまとめてみると日本人らしさとはこう言えないでしょうか。「皆で工夫、とことん、きちんと、きれいに、美しく、恥ずかしくなく、迷惑をかけず、お蔭さまで、どうも」

日本と日本人の評判は世界で良いと言えますが、世界では異色だということも理解しておく必要があります。日本流ですべて通じると思ってはいけません。

ロサンゼルスで小学校の先生の話では「クラスには24か国語の外国語が話されている」と聞いて驚いたら、別の先生が「あら、うちのクラスでは34か国語よ」と言ったのを聞いて仰天しました。身の回りにそのくらい外国人が沢山いるということです。日本では考えられません。だから多くの考え方の人たちのなかでは、自分を主張しないと存在がかすんでしまい、納得できない通りに決まってしまう可能性があります。自分の意見をどしどし言わないととんでもないことになってしまうかもしれません。「出る杭」でないとやっていかれないわけです。周りを見てそれに合わせることは自分に損でしかないのです。

しかし、違いばかりを見てはいけません。国や民族は違っても共通に持つ価値観があります。「暮らし、家族愛、友情、誠実、愛国心、寛容、公正、信仰、親切、いたわり・思いやり、共感力、健康、生命、努力、信用、礼節、平和・・・」などです。自分なりに考えたものを追加してください。これらを基に国際ルールやビジネスや交流が成り立っています。逆にこれらの価値観の重要さに気づかないと強い絆は生まれません。こうした価値観を自分なりに自分のなかで豊かに膨らませてゆく小さな努力が大事になります。この価値観を基本にしなければならないのは、個人だけではなく、会社も国も同じです。

これからは外国人と関わりながら生きてゆくことが一層頻繁に誰にでも起きます。外国人との競争も出てきます。加えて人工知能の発達もあり、職業がどんどん変わりますから、一生勉強してゆく心構えが必要になるでしょう。

そこでどうしてもぶつかるのが「自分らしさ」です。「私でなければできない」ことや場所が必ずあります。それを探すのです。地中の線虫にも役割がありました。大村博士が発見したオコンセルカというアフリカの感染症予防に画期的な薬は、やはり地中の微生物でした。

線虫や微生物にそんなすごい役割がありました。皆さん一人ひとりは自分しかできない役割があると思いませんか。成績がいいというのはほんの一つの「らしさ」です。優しいというのも、聞き上手というのも素晴らしい才能です。どうぞ自分で、それから案外他人(ひと)が見つけてくれるので他人(ひと)の言葉を大事にしてください。

自分らしさを見つけてその役割を果たすとき、気を付けないといけないことがあります。それは何事も自分ひとりではできないということです。さっきのノーベル賞をもらった大村さんも沢山の研究員が働いてくれたから、その微生物を発見できたのです。大統領も総理大臣も一人では何もできません。人の協力をもらわないといけません。そうなると大事なのは、協力してもらうという人間関係です。これがうまく行かないと何事も成功しません。理化学研究所という日本の最高峰の研究所所長の松本さんは、「学問とは真実をめぐる人間関係である」と言っているくらいです。

良い人間関係を築く、あるいはコミュニケーション能力を高めるには、「お早う、おめでとう、ありがとう、ごめん、よろしく、どうぞ」を毎日心がけることです。日ごろのこの心がけが必ず実ります。いくら偉くなっても、こうした心がけが欠けると失敗します。年齢に関係なく、努力できますし、努力しないと年に関係なくみじめな結果になります。

常に「自分らしさ」を発揮できる何かになりたい、何かをしたいという希望や夢を持ち続けることを勧めます。希望や夢は実現する、宇宙には成功の法則があるとカーネギーというアメリカ人の大金持ちが言っています。信念を持って必ず実現するぞと思い続け、努力と重ねると、大宇宙は後押ししてくれると言ってます。似たようなことを日本でも言っている人がいます。稲盛和夫さんという京セラという世界的な電子部品メーカーの創設者で、最近では倒産寸前になったJALを立て直した人として有名です。その人が「自分のやろうとしていることが自分のためでなく、人のためにやるのだ、人の役に立つのだ」と信じて力を尽くせば大宇宙は手を差し伸べて助けてくれると言っています。

大宇宙とか大自然を日本人は「天」と呼んでいました。天命、天性、天の声など色々の言葉に天が入っています。皆さんのなかで、ご両親やおじいちゃん、おばあちゃんから「お天道様はいつでも見ているんだからね」といわれたことはありませんか?(2~3割が手を挙げる)

本当かな、どうかなと思うでしょう。考えてみてください。僕はなんとなくそうかもしれないなあと感じがしますけれど、勿論はっきりとは分かりません。何になりたい、何をやりたいという夢や希望を実現するときに、大事なことがあります。前に「自分だけではできない、人に助けてもらってできる」のだと話しました。

人の協力をもらうのに大事なのは、「どういう人になるか」です。「この人と一緒に働きたい、この人のためだったら汗を流したい」と言われる人。そう言ってくれる人が周りに現れたら自分が望まなくても皆が押し上げるようになります。そう、みんなと一緒に希望と夢を実現することになります。あるいは皆が夢や希望を描くきっかけをくれます。

どういう人になるかは、何になるかと並んで、いやそれ以上に大事なことなのです。70年以上生きて、素晴らしい人たちに会いました。その人たちに共通していたのは、「爽やかで優しく、逃げず諦めない」生き方でした。優しい言葉ですが、その通りするのはとても難しいのです。大人、子供関係なく毎日小さな目標を心がけてみることができます。

「偉くなりたい」ことばかり一生懸命やって来て成功しても、「どういう人になりたいか」を忘れていた人は、失敗しています。

この言葉は僕の提案ですから、皆さんは自分なりに「爽やか」とはどういうことだろう、優しいとはどういうことだろうとか、自分なりに考えて、自分なりの目標の言葉を見つけたり、加えてみてはどうでしょう。

「爽やかで優しく、逃げず諦めなかった」人たちの中から、二人の友人を紹介します。

一人は石井次郎さん。もう一人はジョン・ホープ・ブライアントさん。二人とも高卒で、学歴からみればエリートではありませんが、他の人が真似できない素晴らしいお仕事をして尊敬されています。勿論、社会的にもトップクラスの成功者です。

石井さんは常滑市の夜間工業高校を卒業してバックパッカーとしてヨーロッパへ出かけます。色んな人々から親切にされ、オランダのカメラ修理会社で働き、その会社で一番の技術者になります。当時欧州でホームレスまがいの生活をしている日本の若者の噂を聞いては出かけて行って、「我が家でこれからのことをゆっくり考えたらどうですか」と言ってはオランダまでの切符を渡します。多いときはそういう若者が20人くらい寝泊りしていたそうです。若い人たちを食べさせるのに、劇場のクロークや講演のソーセージ売りなどアルバイトをしてお金を稼いでは、家のダンボールに入れておきます。「どうぞこの中から好きなだけお金をお持ちください。ただどこへ行くかだけはメモを残してください」という張り紙をして。

その後香港に移り、1989年に陸続きの中国本土のシンセンという町にテクノセンターという工業団地を日本の中小企業のために造ります。日本で行き詰まった企業や中国で仕事を始めたいけど、どうしたらいいかわからないという中小企業のためです。「設備機械だけもってくれば、あとは据え付け、材料の仕入れ、働く人たちの採用、売り方、お役所との交渉などは全て面倒みます」という、中国が初めての会社にとっては、とても有難い話でした。

勿論、進出した会社は大成功です。石井さんは会社の面倒をみるために朝から夜まで働きました。それ以来25年以上経ちますが、石井さんは全く給料をもらわない、無報酬です。

石井さんは自分のために時間とお金を使わない人だと僕は思っています。滅多にこういう人はいません。今でも石井さんは香港に居り、70歳を過ぎてからようやく自分の会社を始めました。いつでも、誰でも会ってくれます。

もう一人のジョン・ホープ・ブライアントさんとはロサンゼルスで出会いました。1992年にロサンゼルスで大暴動が発生し、放火、略奪などで5500人が逮捕されました。

きっかけはサウス・セントラル地区でのアフリカ系アメリカ人と韓国系の移民との間の衝突だと言われました。多くのお店が火災で無くなりました。

悲嘆にくれるお店の人たちを見て可哀そうに思い、彼は金融機関を駆け回って義援金を集めてオペレーション・ホープというNPO(非営利団体)を創設し、真っ先に焼け出されたお店のオーナーに融資したのです。市や州、連邦政府が動き出す前です。それ以来、そのNPOを支援してくれる銀行がどんどん増えて、今や資本金にあたる基本財産は2000億円以上になっています。恐らく一部の超お金持ちが作ったNPOを除いては、世界一の規模でしょう。もっぱら恵まれない人たちのために、職業訓練や銀行との関係の持ち方教育、小口の融資、子供たちへの社会人教育などの仕事をしています。

困っている恵まれない人たちが可哀そうだという思いが、ブライアントさんを走らせたのです。石井さんと似ています。

ブライアントさんは高卒後、ホームレスまでやった人です。いわゆるエリートではりません。その彼がこれまで4人の大統領に招かれて、ホワイトハウスで恵まれない人たちへの政策を検討する委員会の委員長を務めました。

「やらなければ」という強い思いを持って人々のために働いてきたら、周りの人たちがブライアントさんをどんどん盛り立てて来たわけです。

これからいずれ社会人になって何らかのお仕事につくでしょう。日本でかもしれないし、外国かもしれません。どんな仕事でも今は外国との関係が必ずといっていいほど出てきます。そうした日のために、準備として役に立つ方法の例を少し挙げます。

英語の歌を覚える、英語の詩を覚えることをお勧めします。自然に英語がうまくなります。口から自然に英語が出るようになります。月500円でラジオの英語講座やほかの外国語口座が勉強できます。6月だったら始まったばかりで間に合います。試しに聞いてみてください。Huffington Postというインターネット用の無料の英語新聞があります。

見出しの英語だけ読み続けるだけで英語に親しむことができます。何か趣味を持っていたら、その趣味専門の雑誌がアメリカやイギリスで出ています。ネットでさがして購読手続きをすることをお勧めします。好きな記事ばかりですから、辞書を引いてどしどし読み進むでしょう。それで英語が上達します。英語の俳句だってあります。これはだれでもできそうです。

あとは積極的に困っている外国人を見つけたら話しかけてみてはどうでしょう。留学や外国旅行の機会があったら思い切って試してみることもいいでしょう。その時に備えて自分の言葉で、日本と日本人のことを話せるように少しずつでも準備しておくといいですね。

皆さんが自分らしさを発揮して希望と夢を持ち続け、実現へと毎日歩み続けられるようお祈りしています。1時間半の間、静かに聞いてくれてどうも有難うございました。

湯澤 三郎

湯澤講師講演スライドはこちらから
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