横浜市立梅林小学校の先生方に講演を行いました


2017年7月26日、横浜市立梅林小学校に湯澤三郎講師を派遣し、25名の教職員の皆様に「国際社会で活躍できる人材の育成をめざして」~ 未来を生きる子どもたちに国際社会で活躍できる基礎を ~ というテーマで講演を行ないました。

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湯澤講師略歴:1940年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。 ジェトロ理事、エルサルバドル大使、エジプト通産大臣輸出振興アドバイザーを歴任。現在、 国際貿易投資研究所専務理事。海外駐在体験国:スペイン、米国、ブラジル、ペルー、エルサルバドル、エジプト。

以下、湯澤講師の出講報告です。

7月26日、新杉田駅で阿部清講師派遣委員長と落ち合いタクシーで横浜市立梅林小学校へ向かいました。学校は丘の上。黒木校長先生のお話では、かつては2万本の梅の木があったそうです。その名残りで校庭の周囲には番号を付けた50本の梅の木が、春先にたわわな梅の実をつけます。(美味しい自家製梅酒をご馳走になりました。)

今日は梅林小学校の先生方(25名)にお話をすることになっていました。黒木校長先生から頂いた題は、「国際社会で活躍できる人材をめざして」です。これまで生徒さんにお話していた角度とは違います。教育者としては、恐らくあれもこれもというお考えがあるでしょう。しかし、生徒さんへの注文が多ければ多いほど、学ぶ側は混乱して何も残らなくなる恐れがあります。国際社会で活躍できる人材に最も必要なものは何か、に絞ってお話をしようと思いました。それを小学生のうちから身に着ける基礎を習慣化できれば、そのうえに積む知識・教養は本物になる。反対にその要素を軽視したり、気付かずに成人すると、知識・教養のみならず、社会人としての成功も崩壊する可能性が大きくなる。その要素とはコミュニケーション能力と共感能力。今日の主題をそこに焦点を絞りました。お話の要旨は次のとおりです。

ここ数年、日本の国際化は目まぐるしく進んでいる。外国人観光客は4年で3倍の2400万人。企業の売り上げの6割弱は海外事業取り引きから。上場企業の利益の三分の一は海外とのM&A(吸収・合併)に投入されている。日本企業の海外拠点は2万4000あり、海外のすし店は3万店、和食店は9万店もある。70年代初期には、「背が低くて出っ歯でカメラを提げている日本人がニヤっと笑うと歯に黒い海苔がついてたりして」とアメリカではからかわれていた。それが今や「すしを食べるのはエリートの証し」と様変わりになった。

こうしたグローバル化に比べて、それを担う人材不足が今や大問題になっている。私なりの考えでは、背景には80年代後半にもてはやされた日本の成功体験のひきずりがあった。日本的経営の成功が世界で賞賛され、日本が舞い上がってしまった。

企業の終身雇用、社員のお家意識と滅私奉公、ガンバリズムを象徴する深夜残業、現場主義、アフタファイブの人情的管理等。海外の賞賛は日本の経営者に「これでいいのだ」意識を深めている間にバブルが崩壊。ほぼ20年に亘り実業界はうつむき経営に陥った。「これでいいのだ」という成功体験を引きずりながら。

その間、隣の韓国では「追いつけ追い越せ」の大合唱。サムスンは90年初から言語・異文化習得を含め地域専門家養成に一人1500万円を投じて本腰を入れ、今やその数5000人を数えるほどになった。カイロで聞いた話では、中国はアラビヤ語の方言であるエジプト語の専門家を数百人規模で送り込んでいる。

片や日本では海外への留学生はこの10年で3万人減、企業で海外勤務希望者は少数派になり、8割の企業で国際人材が不足と言われる。大学の地域家研究も減少気味だ。先に挙げた企業のM&Aについては、過半のケースが失敗しているとの調査結果もある。

端的に言えば、本社から派遣されるトップ、幹部が現地企業の社員を掌握し、モチベートできないからと考えても間違いではなかろう。「この上司の下では自分のキャリアアップにならない」と社員が判断すれば、心は離れて転職への関心が高まる。こうした企業の業績が上がるはずがない。日本の会社の2社に1社は海外に派遣するトップ、幹部の人材がいないと悩んでいる。

国際人材とはどういうものか。英語がうまいに越したことはない。異文化知識が豊富ならそれに越したことはない。だが人間関係の基本はコミュニケーション能力である。その認識と訓練を抜きに語学や知識を装備しても効果は極めて限られる。あるいは無力化する。

例えば、社員と話す時の目線が高ければ社員は心を開かない。コミュニケーションとは相手との共通部分を広げて行こうとする行動である。相手の話に興味を持つ。自分の関心と重ね合わせて話を深め広げて、その時を共有できたことに感謝するという思い、言葉、行いである。

その意味で国や民族が違っても共通する価値観がある。そうした共通した価値観を基に国際ルールや国際ビジネス、国際交流の基盤になっている。そうした価値観とは「暮らし、家族愛、愛情、友情、誠実、郷土愛、愛国心、寛容、公正、信仰、親切、いたわり・思いやり、共感力、健康、生命、努力、信用、礼節、平和、・・」などである。

小学生が基礎学習や基礎体力を身に着けるよう教育で思いやり、これら価値観を体得する指導が必要ではないか。言うなればBHN(ベーシック・ヒューマン・ニーズ)に対比してBHV(ベーシック・ヒューマン・バリュー)というもの。コミュニケーションの基本は共感能力である。

人の体験は人との出会い、出来事を通じた体験、書中の人物や言葉などに依る。科学は大自然と対話する言語だと某ノーベル賞受賞者から聞いたことがある。自然界のできごとは、天からのメッセージともいえる。体験を通して共感能力を涵養するためには、天と人からのメッセージに耳を傾け、耳を澄ますことから始まる。

これを子供の時から習慣化することが大事になる。一つの提案として、子供たちの夢と希望を重ねながら、習慣化を図るというのはどうだろうか。夢と希望は努力すれば叶えられることを確信するように誘導する。それには「自分一人では達成できず、他人の助けが必ず必要である」ことを心に刻むこと、しかし同時にまた、「何事も一人の強い意志と情熱から始まる」ことを確信させることが重要になる。

そのための方法に提案がある。「お天道さまが見てるよ」という言葉を最低2~3割の生徒は聞いたことがあると言っている。恐らくじっくり思い出すと3~4割はいるとみてよかろう。隠れて悪いことをやっても,お天道さまはちゃんと見てるからね、という躾けの言葉として受け止めるのではなく、裏返して「自分が一生懸命努力すればお天道様は見ててくれる、応援してくれるよ」と前向きの言葉として生徒さんに投げかけたらどうか、というものだ。

「お天道様」は日本人のDNAに刻まれている思いである。日本人の7~8割が無神論者だという米大手の調査結果には違和感がある。なんとなくでもよい。天を信じるというのは“SPIRITUAL”だと宣言して構わない。欧米では今教会離れが進んでおり、彼らは“I am not religious but spiritual.”と言うらしい。その伝で行けば、日本人も同じ

科白を使う十分な資格がある。先の共通価値観をHuman と規定すれば「お天道さまがみててくれる」思いはSpiritualだと言ってもよい。BHVはHuman & Spiritual な生き方への指向だともいえる。この基礎を小学生のうちに、小さなことから習慣化する工夫に意味を見出したい。

コミュニケーションの基礎となる共感能力とは、「可哀そう」「良かったね」という思い、言葉、行いで人に寄り添うことから始まる。決して易しいことではない。これでできたというレベルに達するのは至難の業だ。だからコミュニケーション能力、共感能力の涵養は一生涯続く至高の目標である。小学生からどう始めたらよいだろうか。

一つの提案だが、一人ひとりがスマイル帳を持って、毎日笑顔を与えた回数と笑顔を受けた回数を☺印で記帳して毎月、クラスで結果について感想交換会を催したらどうだろうか。笑顔は共感の大事な印。人に笑顔で接する際の経験を内省化する作業は、成人になっても極めて有意義だ。

もう一つの提案。コミュニケーションの要素を易しく言うと「お早う、おめでとう、ごめん、よろしく、どうぞ」の5語に尽きる。この5語が象徴する思い、言葉、行いで自分から進んで相手に近づいて行く積極的な姿勢を物語る。1日の終わりに暫時、今日はどれだけ5語のうち実行できたかにふと思い致す日が増えれば、間違いなく素晴らしく輝く人生が開けると言って間違いない。一人ではなかなか実行を習慣化するのは難しい。クラスで毎月でも実行の感想、経験の発表、意見交換ができれば、各自の継続に大きな励みになるに違いない。

自分らしさを発揮できる場所は外国かもしれない。自分らしさを見つけて助け合う人は外国人かもしれない。今やそうした可能性が現実味を帯びている。生徒さんに身の回りの外国、外国人を改めて見つける作業をクラスでやってみてはどうだろうか。日常の買物品の原産国を列挙して地図上に色塗りしてみる。新聞、TVで見た外国、外国語名を持ち寄って列挙して意味を学ぶ。

地域で在日外国人を支援するNPOの話を聞くのも粗野を広げるのに役立つ。その他工夫を重ねて外国と外国人を身近に感じる方法を考えてみたらどうだろうか。心も行動も外向きになった時に成長、発展が待っている。             了

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