秋田県教育庁主催「スーパーイングリッシュ・キャンプ」に湯澤講師を派遣しました。


「国際人をめざす会」では、2017年8月16日、秋田県教育庁主催で開催された「スーパーイングリッシュ・キャンプ」に昨年に引き続き湯澤三郎講師を派遣し、中学3年生~高校3年生約40名に「外から見た日本」というテーマで英語を交えた講演を行いました

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湯澤講師略歴:1940年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。 ジェトロ理事、エルサルバドル大使、エジプト通産大臣輸出振興アドバイザーを歴任。現在、 国際貿易投資研究所専務理事。海外駐在体験国:スペイン、米国、ブラジル、ペルー、エルサルバドル、エジプト。

以下、湯澤講師の出講報告です。

昨年9月に続き、秋田県教育庁主催のイングリッシュ・キャンプ参加の高校生に、お話する機会を頂戴しました。8月15日、秋田新幹線で秋田へ向かい、秋田からは在来線で1時間半後、青森との県境近くのあきた白神駅へ着きました。白神山地を背に日本海を見下ろし、風がとても香しく爽やかで若者の集いには絶好のスポットでした。教育庁の青山先生と再会。夕食は名物のハタハタの一夜干しに舌鼓を打ち早々に爆睡。翌16日10時から11時半まで、昨年の「外から見た日本」を軸に、概要次のとおりお話しました。

ここ数年、国際化、グローバル化という言葉のとおり、外国人と関わる機会が増えている。訪日外国人はこの4年で3倍の2400万人になった。日本企業(上場)の売り上げの6割は海外取引きからのもの。海外の和食店は9万店、すし屋は3万店もある。日本の大学では外国人教授や留学生を見るのも普通になった。日本企業の海外法人は2万4000社くらいある。牛丼店や理容店、スーパー、コンビニ、ファーストフード店に勤めるようになっても、外国で働くかもしれない。企業も日本人だけでなく、外国人も進んで採用するようになっている。国内で外国人と競争するようになってきた。

そうした国際化が進んでいるにも関わらず、海外へ出て勉強したい、働きたいという人は少ないし、むしろ減りつつあるようだ。外国への留学生はここ10年で3万人減。企業の8割は国際人材が不足と言っている。日本企業は今、国内へ投資しても儲からないから、外国企業を吸収・合併(M&A)して利益を上げようとしているが、大半は失敗している。現地企業では案外高学歴の社員が多く、急に外国企業のトップとして派遣された本社の幹部は人材のマネージに苦戦する。現地の日本企業は「前向き思考でやる気のある」人材を派遣してほしいというのが最大公約数だ。「前向き思考とやる気」だけで、現地の外国企業との競争に勝てる時代ではなくなっているのだが。

一方ではおよその国で日本にアニメがTV放映されており、日本への関心は高まっている。アニメの話をすれば、若者同士すぐに国境を越えて話が弾む。アニメに惹かれて日本を訪れる外国人も少なくない。 そうした外国人は日本へ来てびっくりする。どこでもゴミは落ちてないし、スーパーやレストランも清潔。掃除係がいないにも関わらず。飛行機の座席も日本人の席は綺麗というのが各社で定評になっている。飛行機の席が段々綺麗になってきたのは日本人の影響かもしれない。電車も約束も正確に時間が守られる。3分遅れても車掌が謝っている。こんな国はない。夜、女性が一人歩いても、子供同士で外出しても安全だし、安心だ。滞日数年後、米国へ帰った某社員の子供さんは「アメリカには自由がない!」と不満をぶつけたとか。コンビニや自動販売機が典型だろうが、とにかくどこでもサービスが早い、何でもおいしい、安いし、皆親切だという評判だ。だからそういう土産話を聞いて「ほんとかな」と来てみる外国人もいて、ほんとにびっくりして帰国し、「びっくり話」をする。

そういう日本人らしさというのはどこから来るのか。外国人から見た日本の文化、日本(人)らしさとは、神社・寺院、禅、能、歌舞伎、茶道、柔道、剣道等だろう。また外国人から見た日本人は、控えめ、あいまい、工夫好き、集団志向、外聞懸念等々だろう。ビジネスは文化が端的に表れる分野でもある。日本のビジネスで特徴的なのは、お上意識、ボトムアップ、横並び、前例、人情経営等々がすぐに上げられる。 書店にゆくと日本と日本人らしさについて沢山の本が出ていて、色々書かれている。

それらの内容を私なりに簡潔に易しい言葉で言うならば、次の通りまとめられるのではないか。すなわち「皆で工夫、とことん、きちんと、きれいに美しく、恥ずかしくなく、迷惑をかけず、お陰様で、どうも外国人からみると日本人はまだ特別にみえる。自分の意見を進んで述べることがない、周囲をみてからモノを言う、だから何を考えているか分からない、あいまいで理論的でない、いつも仕事の話しかしない、生真面目でユーモアがない、というのが代表的な意見だ。

しかし、総体的にみれば、日本人は信用されており、地味だけどやることはやる、公徳心があるという評判だと考えてよい。対外的にも、外国の災害などで日本が約束した金額は必ず支援する。外国は必ずしもそうではない。

戦後1960~70年代前半までは、アメリカにおける日本の評判、例えば「メードイン・ジャパン」は物まねの粗悪品ですぐ壊れるという、ジョークの対象だった。それが今のような「信頼されるメードイン・ジャパン」に一変した裏にはそれだけの努力があった。80年代後半には、トヨタ自動車で始まった「カイゼン」運動が米国はじめ、世界で日本的経営の象徴のように一世を風靡した。働く人誰もが身の回りからムダ、ムラ、ムリや問題を発見し、グループで解決法、改善法をとことん探して実行する「カイゼン」は今ではオクスフォード辞典にも載っている。この運動は高品質品を安くお客様に提供するのが目的だが、そのための品質管理を狙いとするよりは、むしろ人間の品質管理を狙いとするとも言われる。つまり生き方全般の見直しに通ずるというわけだ。当時はメードインUSAの競争力が衰え、替わって日本製品が競争力を高め、実質的に日本経済が世界一にもなろうという勢いで、アメリカの有名なビルを買いあさったりした。日本的経営が一番だという自信過剰気味になってしまった。それが尾を引いて90年代からその後の失われた20年の間、成功体験をひきずったまま来て挑戦意欲を失ってしまった。

カイゼンはその後も世界各国に広がり、アフリカではエチオピアがとても熱心に幼稚園から取り入れて実践している。アメリカでも大手企業が実践してきたが、その成果はあるとはいえ、昨年のアメリカのコンシューマー・レポートという雑誌(10月号)では、自動車10車種のトップブランドのうち、アメリカ車は2社だけ。7車種は日本ブランドが占めた。とことん究極を極めるという日本人らしさが、ビジネスでも発揮されている好例といえる。

こうした日本人らしさは、今に始まったことではなく、古くは16~17世紀に来日したザビエルを初めとする宣教師たちや、江戸から明治にかけて来日した外国人が、日本人の特徴について色々書き残している。宣教師たち、実は当時のヨーロッパの知識教養ではエリートだった彼らは、「世界でかくも聡明な人々はいない。自分たちの方が野蛮であり、日本人から教えられる。知識欲は旺盛・・・」と書いているし、幕末・明治期に来日した欧米の知識人たちは、日本人が礼儀正しく、貧しいけれども卑下せず、清潔で秩序正しく、賄賂を拒絶し、教育程度が高い」ことに驚いている。

こうした伝統的に日本人が持っている美徳を世界大的に見直し、その多くが世界の人々と共有する価値観として再認識する「見改め」が必要だろう。共有価値観とは、暮らし、家族愛、愛情、友情、誠実、郷土愛、愛国心、寛容、公正、信仰、親切、いたわり・思いやり、共感、健康、生命、努力、信用、礼節、平和等である。そうした共有価値観は国際的なルールや交流の基礎となる。一口でいえば、その価値観はHuman & Spiritualなものだ。日本人はHumanでSpiritualな国民だ。

日本人はもっと世界のために働いて欲しいと期待されている。ぜひ国内だけでなく、世界をみて自分がどう人のために役立てるか考えて頂きたい。その時大事なのは、「何になりたいか」と同時に、「どういう人になりたいか」を考えることだ。この視点がないとどんな高い、価値ある仕事についても失敗することが多い。

私なりの目標は「爽やかで優しく、逃げず諦めない」というもの。これは易しい目標ではない。死ぬまでこの目標を追い続けるだろう。年齢を問わずいち早く挑戦すれば、必ず成果が蓄積される。アスリートの努力は、必ずメダルに結び付くとはいえないが、この目標に向けた日常の努力は必ず蓄積されて裏切られない。

何かを成し遂げようとした時、大事なのは「自分一人ではできることは限られる。「自分一人ではできない、人の助けが必要だ」という考えだ。人から助けてもらうには、人とのコミュニケーションが必要になる。コミュニケーション能力を涵養することが、とても意味のあることになる。どうすればその能力を高められるか。沢山の本が出ているが、易しい言葉で私なりにお伝えできるのは、「おめでとう、有難う、ごめん、よろしく、どうぞ」をあらゆる機会に心がけ、思い、言葉、行いとステップアップして行けるよう自分なりに毎日心がけることで、それが可能になる。これもけっして努力が損なわれることなく、成果は必ず蓄積されて、どのような人生の側面でも成功へと導く鍵となる。

コミュニケーション能力の基礎となるのが共感能力。共感能力を養うには「可哀そう」「よかったね」を思い、言葉、行いで実行する機会を増やして行くようにしたらよいと思う。思うだけでも易しくはないし、それを言葉で表し、行いで表して行くのはとても大変なこと。しかし、一生その努力を続ける価値のあることである。そうした志を大きく持って、世界にはばたいてください。

講演スライド はこちらから