町田市立真光寺中学校主催の「国際交流の日」へ3講師を派遣しました。

6月30日、町田市立真光寺中学校で開催された「国際交流の日」に、「国際人をめざす会」から菊池紀男、関根純一および芹澤健師の3講師を派遣しました。

 

同中学校では、今年で31回目を迎える「国際交流の日」と称した全校挙げてのイベントを毎年開催しており、世界の文化・伝統・習慣を学び、生徒と世界の人々との繋がりや生徒自らの役割を考える場を提供することを目的としています。

  • 1年生のテーマ「アジアの国々を知ろう」
  • 2年生のテーマ「世界の国々を知ろう」
  • 3年生のテーマ「日本の文化・伝統を知り、世界とのつながりを考えよう」

という各テーマに基づき、当会をはじめJICA、難民を助ける会、地球の木等のボランティア団体や東京外大を含む3大学など合計10団体から講師が派遣され15の分科会で出前授業が同時開催されました。

当会は、3年生の6分科会の半分、3分科会を担当し、3人の講師が以下のテーマ(講座名)で出前授業を実施しました。

  • 菊池講師:「ブラジルってどんな国?~移民と多様性~」
  • 関根講師:「英語落語・小噺を活用した実践的英語の学び方」
  • 芹澤講師:「キャリア教育と国際感覚」

以下は、各講師からの出講レポートです。いずれの講師の出前授業も、先生や生徒たちの好評を博しました。

講師派遣委員長 阿部 清

 

菊池講師

講師略歴:1945年生まれ。早稲田大学政経学部卒。伊藤忠商事()に入社し、ブラジル(サンパウロ)6.5年、米国(ロスアンジェルス、及びデイトン/オハイオ州)略10年駐在。定年後、第一法規()5年間勤務。

講演テーマ:「ブラジルってどんな国?~移民と多様性~」

生徒を5グループに分け、グループ間で成績を競う形をとった。授業の前後にブラジルの音楽を流し雰囲気作りを試みました。

前半:ブラジルの自然・歴史・文化・産業などを紹介し、 国旗の意味、国名の由来、位置、人口構成などを質問しグループごとに話し合わせ回答させました。

正解の説明は、出来るだけ写真や図を利用しました。安倍首相がリオ・オリンピックで演じたスーパーマリオの写真を見せ、日本の反対側(対蹠点)の正確な位置を推測させました。国土の大きさを理解させるため、パンタナル(世界最大の透明な湖、湿地帯)、レンソイス(東京都の70%の広さの白い砂丘)など、日本では余り知られていない自然を紹介しました。

後半:ブラジルが「未来の国」と呼ばれる背景と、それを日本・日本人がどう参考にすべきかを考えました。

  • 南米の中で、ブラジルだけでポルトガル語が話されている訳
  • ラテン民族の特性
  • 単に自然に恵まれたのではなく、不可能と思われることにチャレンジし何とかしてきた国民性・スタイル(Jeito/Jeitinho)
    (例)人工首都ブラジリア建設、バイオエタノール自動車開発、超深海油田開発、アマゾン農業開発(セラード)など
  • 寛容性(ポルトガルとスペインとの違い)

最後に英語の重要性に触れて講演を終了しました。

生徒感想文(菊池講師)

 

関根講師

 

講師略歴:1947年生まれ。横浜国立大学経済学部卒。日商岩井(株)(現、双日)に入社し、英国・カナダ駐在。 国交省主幹の英語通訳士ガイド資格を取得し、退職後は企業研修や通訳・翻訳に従事。

講演テーマ:「英語落語・小噺を活用した実践的英語の学び方」

講師が担当した分科会には、3年生の男子生徒17名と女子生徒7名の24名と英語担当教師1名が終始出席されました。どの出前授業に参加するかは、学年毎に生徒さんの自主性に任せられると、分科会主導教師よりお聞きしましたので、講師は以下の様な軽いタッチの宣伝文句で参加者を募って頂くようお願いしました。

  • 『グローバル社会に生きる皆さんにとって、英語は必須のコミュニケーション・ツールです。皆さんの良く知っている昔話「桃太郎」を英語落語で聞いてみませんか?
  • 学友の前で、簡単な落語小話を英語で自ら体験してみませんか? きっと、中学校生活に楽しい思い出の1ページが加わると思いますよ!
  • 英語落語の実演と英語小話の体験コーナーの前段で、講師の経験に基づいた効果的な英語学習方法も紹介されます。是非ご参加を! 』

授業は2部構成としました。第1部では、実践的な英語の学習法を自らの体験に基づきお話しし、第2部では、一般的な落語を解説した後、実際に「桃太郎」の英語落語を実演しました。生徒さんが自ら演じる小話体験コーナーを最後に設けました。

授業の冒頭で、参加生徒さんの英語に対する関心度や英語力を確かめるために日本語で簡単な質問をしました。各テーマの使用言語を英語のみにするか、日本語と英語を併用するか、英語で話す場合の速度や表現方法などを見極めるための作業でもあります。英語のみで演じる英語落語以外、今回は、テーマ毎に、先ず日本語で内容を説明し、その後、比較的ゆっくり、且つ易しい英語で同じ内容を繰り返す方法を採用しました。

第1部の導入部では、英語の総合力を高めるために最も効果的な方法として、英語による自己紹介を力説しました。講師によるGEMを利用した自己紹介を日本語と英語で披露した後、生徒さん自らが実行可能と思われる自己紹介文の作成法や活用法について、日本語で説明しました。各種の学習法とその効果については、講師の体験的学習法を様々な角度から解説しました。参加生徒さんが自ら実行可能な又は興味のある方法が一つでも見つかり、実行してくれれば、と願いつつお話ししました。

第2部の落語解説では、落語が初めての生徒さんが多数おられる様子でしたので、サブテーマ毎に、出来るだけ簡潔で、平易な説明に加え、やや過剰なジェスチャーを意識的に交えながら演じました。

昔話「桃太郎」は、参加者のほぼ全員が内容を理解していると思いますが、英語のみで演じられるだけに、本演目で使用される英語表現や英単語を出来るだけ網羅した特別解説書を作成し、参加生徒さんが事前学習できるように事前配布をお願いしました。実演では、15分の限られた時間の割に、台詞の分量が比較的多いため、やや早口な話し振りになりましたが、登場人物の息子の生意気な雰囲気を醸し出す試みが、参加者に多少でも理解されれば本望、と期待しつつ演じ切りました。

最後の小話体験コーナーでは、予定終了時間が迫り、参加者全員を代表して、男子生徒さんのお一人が「Hijack (At the airport)」の小話を、男性英語担当教師の方が「A bathroom scale」を、高座に上がって演じられました。とくに、普段の教室の先生からは想像できない高座での演技(登場人物の女性を演じる身振りと声色)に、観客の生徒さん全員から、笑いと拍手喝采が一斉に湧き上がり、講師も羨むばかりの盛り上がりを見せて、講師が担当する分科会は無事終了いたしました。

最後に、出前授業の機会を提供して頂いた真光寺中学校の校長先生を始めとして、本イベントを企画・運営して頂いた先生方、生徒さん達、その他関係者の皆様に感謝申し上げます。とくに、来年卒業される中学3年生の皆様が、本イベントで何かを感じ、何かを掴み取り、学校生活のアルバムに素晴らしい思い出の1ページを加えて、高校進学に臨まれることを祈念しながら、本レポートを締め括りたく存じます。

講演レジュメと英語小話実例

生徒感想文(関根講師)

 

芹澤講師

講師略歴:976年生まれ。一橋大学商学部商学科卒。2005~2008年、伊藤忠中近東会社ドバイ駐在、中東諸国、アフリカ諸国におけるエネルギートレードビジネスに従事。2011~2013年、伊藤忠商事ロンドン事務所駐在、ヨーロッパ、アメリカにおける原油・石油製品・LPGのトレードビジネスに従事。

講演テーマ :「キャリア教育と国際感覚」

今回で2回目の講義として、講師を務めさせていただきました。時より、音楽を流しつつ、少しでも若い皆さんにメッセージが届き、将来、いくらかでもお役に立てばと思い話しました。

実際に私が海外で生活し、仕事をしていく中で感じたことを契機に、日本と海外との比較文化のお話しと、海外に関して少しでも興味好奇心を持ってほしいこと、じっくりと本を読んでほしいこと、自立して生きていってほしいこと、等をお伝えしました。

<導入・自らの中高時代、海外に対する興味を持ったきっかけ>
自分が高校生だった頃、何を思っていたか思い出しながら、主に受験生活で暗記中心の勉強や、割と厳しいルール、校則に息苦しさを感じたこと、いつか海外にでて、違う世界の空気を吸ってみたい、そんなことを思い始めていたことを話しました。

海外で仕事してみたい、生活してみたい、そんな思いを思い立ったきっかけの一つである、海外の音楽をいくつか画面で流し、一緒に聞いてもらったりしました。(Jazz のマイルス・デイビス、アリシア・キース)歌詞を英語で書き出したり、実際に歌ったり、そんなことが英語や海外への興味のきっかけになればと思い話しました。

<実際に駐在した、ドバイ(UAE)、ロンドン(イギリス)の話>
世界では宗教の影響を受けている人がいかに多いかをお伝えしました。ドバイが繁栄している理由を、自説でありますが、ドバイからみれば近隣にあたるインドからの移民が大量に移住していること、その背景には、UAEはイスラム教国でありつつも、自由なお国柄であること、インドでいまだに根強いカースト制が存在し、国外で自由に働きたい、という欲求にこたえているのが、ドバイであることを話しました。

イギリスでは、中東に第一次世界大戦を境に、実にしたたかな外交を繰り広げてきたこと、古いことを尊ぶ日本とはやや違う成熟したお国柄であること、個人の自立が進んでいること、数々のスポーツを世界に広めたソフトパワー大国であること等をお話しました。

<日本と海外との比較>
いくつか対比形式で、日本と私の経験した中東、イギリス、アメリカの国々の文化の比較をしました。例えば

  • 細かい作業、緻密な日本人、割りとざっくりとした外国人
  • 空気を読む日本人、読まない外国人
  • 上下関係を気にしすぎる日本人・さほど気にしない外国人
  • 全員の同意を重視する日本人・全員賛成を求めない外国人
  • 身内に対する親切さの一方で、部外者への冷淡な日本人・個人の独立を好む外国人
  • 若いころで勉強が終わる日本人・大人になって必要に応じて頑張る外国人、等

<本の紹介>
いくつか、皆さんに読んでほしい本をあげさせてもらいました。今回は、欧米、中東の話が中心でしたが、山崎豊子の「大地の子」、「不毛地帯」がTVドラマにもなったこともあることから、入り口として入りやすいのではないかと思い、勧めさせていただきました。

また、お話したテーマに関係する本の一つとして、「自由と規律」(池田潔 岩波文庫)の内容に触れ、イギリス人の話として、言いにくい場、空気を感じることがイギリス人にもあり、そういう場でもイギリス人は、日本人同様に悩むのですが、その際に大切にしているのは、ユーモアのセンスであることを話しました。

ビートたけしが上手なように、誰でも言いにくいこと、話しにくいことがあるが、それを打ち破るきっかけはユーモアであること、そんなことが書いてあることを話しました。

また、実例を用い、本を読む際に、自分の好きな言葉が見つかったらメモをとってほしいこと、それが将来何かの際に役立つであろうことを話しました。

<日本のバブル期の話>
株式の当時と現在の時価総額を比較し、日本がお金持ちだといわれていた時代と、今日とを比べてみました。いろいろな理由があるのかと思いますが、日本人特有の上下関係や周りの空気を読む国民性等が、悪い意味での閉塞感のようなものにつながったのかもしれないことをお話ししました。

本田宗一郎の話をし、ホンダの車、オートバイが普及したのは、技術や表面的なものをつくったのではなく、人の心を研究するところと本田技研工業を本田氏が定義したように、世界で通じる普遍的な感性を作り出したのではないか、という話をしました。バブル期の物質的な豊かさの裏側でこのようなことを考えていた人がいたことをお伝えしました。

<若い皆さんへのメッセージ>
これまでの話の総括として、以下4つほど、お伝えしました。

  • 今後、日本語を理解する人間が大幅に増えない世の中で、海外により興味を持ってほしいこと。
  • 興味を持つことからすべてが始まるので、なんでもいいので、興味をもってほしいこと。
  • テーマを見つけてほしいこと。そのためには本を読み、テーマを見つけられたらまたその分野の本を読み、最終的にはその道のプロ、第一人者に教わってほしいこと。
  • 自分がどのような人間なのか、自身を見つめてほしいこと、自分自身で人生を切り開いってほしいこと。(中島みゆきの曲の、「宙船」の歌詞を使って)

<感想>
いろいろな興味、背景を持った生徒さんがいらっしゃるなかで、話のメインをどこに置こうかいろいろと考え、中学生の皆さんにはやや難しい話にもなるかもしれないが、比較文化の話、経済の話をしようと思った。

特徴的な個別の行動様式や思考の海外と日本との差異の根底には、宗教に強く影響を受けてきた海外と、比較的無神論的な立場をとる日本との差があり、そのことは海外に出て生活してみるとよりわかりやすい感覚である一方、日本にいるとなかなか分かりづらい。家族のみならず、社会生活においても周囲にいる人間関係を重視する日本人の特徴は、良くも悪くも、日本文化の特徴で、人間関係を軽視するわけではないが、それを必ずしも絶対視しない、やや突き放した客観的な立場を重視する海外文化との差を、若い世代の特に中学のころからでも経験してほしいと思った。

年齢を重ねても多様な価値観を抱擁できる、文化的に、精神的に豊かな人材を育てるためには、社会に出る前の若い頃に、育ってきた背景、習慣を客観的にみられるような、文化比較を経験できる世界に身を置くことが重要であり、日本のエリート教育に必要なことの一つだと思われる。またそうした多様性への真の寛容性や、異なる個性を抱擁しつつリーダーシップを発揮することが、日本社会に欠けている部分の一つなのではないか。日本の経済的な失速の真の原因も、そのあたりに根っこがあるのではないか。理想論ではあるが、寛容でありつつも、いざというときにリーダーシップを発揮できる人材、判断することができる人材が育ってほしいと思った。

真光寺中学の皆さんには、少しでも海外に興味を持ってほしいと思いつつ話し、講演中の若い皆さんの真剣な表情に勇気をもらいました。貴重な機会を頂き、ありがとうございました。

講演資料

生徒感想文(芹沢講師)