横浜市立梅林小学校へ湯澤講師を派遣しました。

2月22日に、横浜市立梅林小学校へ湯澤三郎講師を派遣し、卒業を間近に控えた6年生に「めざせ、日本人らしい国際人」というテーマで講話を行いました。

湯澤講師略歴

1940年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。ジェトロ理事、エルサルバドル大使、エジプト通産大臣輸出振興アドバイザーを歴任、現在 国際貿易投資研究所専務理事。海外駐在体験国:スペイン、米国、ブラジル、ペルー、エルサルバドル、エジプト。

以下、湯澤講師の出講報告です。

2月22日(金)、阿部講師派遣委員長と横浜シーサイドライン新杉田駅で10時10分に待ち合わせして、丘のうえにある梅林小学校へタクシーで向かいました。梅林小は文字通り50本の梅が満開に近く、梅の香りが一杯に漂っています。暖かい日差しの校庭あちこちでは生徒さんたちがクラス対抗縄跳びの練習で、歓声が飛び交っています。校長室で黒木校長先生にご挨拶して今日の打ち合わせを済ませると、先生から「縄跳び大会を見に行きましょう」と誘われて校庭に下りました。3分間で何回飛べるかを競う全校挙げての大イベントです。縄が大きく波打って、生徒さんが間髪を置かずに相次いでリズミカルに飛び跳ね、クリアしてゆく様は壮観です。

最高優勝は375回も飛んだ6年3組でした。

なんと今日、お話をすることになっていたそのクラスの優勝でした。

教室で校長先生と阿部委員長から私を紹介いただいてから30分ほどお話ししました。30分のお話しの後、質疑応答の時間をいつもより多くしたいというご要望によるものでした。

講演のテーマは「めざせ日本人らしい国際人」です。このクラスの担任の先生はサンディエゴの小学校との交流プログラムでアメリカへ行かれ、多くの気づき、発見、刺激を得て帰国されたそうです。そのせいか教室には、英語表現の垂れ紙がかなりあります。先生が生徒さんの将来に期待するお気持ちがビンビンと伝わってきます。

「日本は外国、外国人と関わりが急激に高まっており、もはや海外との関わりなくしては発展できない」というポイントを、身の回りの数字からまず始めました。

企業売り上げの6割前後が海外取引から、食料の6割、エネルギーの9割が海外依存だし、海外にある日系企業17万5000社、駐在人等は135万人に上る。国内でも150万人強の外国人が居り、コンビニや呑み屋、小売店で働く外国人は当たり前に見かけるようになった。和食店は今海外に9万店あり、寿司チェーン、ラーメン屋さんに就職しても海外で働くことは珍しくなくなった。外国人とどう一緒にうまく働くかは、今の日本人の大きな問題になっている。

世界から日本と日本人を見ると、昔からの評判はそのまま生きている。清潔、安全、便利、正確、親切、美味しいなどなど。古くは室町時代に来た外国人宣教師たちから江戸―明治にかけて訪日した外国人が、異口同音に諸例を挙げて書き残している。今も訪日外国人観光客は同じように感じている。夜女性が一人歩きできる日本みたいな国は世界では本当に珍しくなった。電車が3分遅れて車掌がお詫びする国は日本だけだ。レストラン、電車内、道路、トイレなど、日本はどこへ行ってもきれいで気持ち良い。コンビニはどこにもあるし、欲しいものを買えるから便利そのもの。「日本は天国だ」と昔来た外国人が言っていたそうだが、今も同じように言う外国人がいる。

しかし、外国人から見た日本人は、よく理解できない点が多い。余り自分の意見を言わないので何を考えているか分からない。あいまいではっきり言わない。

だから、ビジネスで日本人は海外との関わりが増えるにつれて多くの問題を抱えるようになっている。年間600件くらい外国企業を買収しているが、その後うまくいっている例は少ないと言われる。理由は外国人社員と如何に良好なコミュニケーションをとりつつ、最大限の能力を発揮してもらうかで問題があると思う。一方、国内に進出してくる大方の外国企業も、日本でのビジネスは難しいと考えている。日本人の考え方、習慣などは独特で、壁があると考える外国企業は少なくない。

日本がこれから外国とビジネスを発展させてゆくための人材は、8割不足しているという調査結果もある。日本の将来にとって大きな問題だ。

では皆さんはこれからどういう人をめざしたらいいのだろうか。世界から日本に期待されることは大きく、多い。「外国からいいとこ取りをする」だけでなく、日本だからできることは多い。外国人と一緒に働き、一緒に人と社会に役立つ仕事をするためには何をめざし、どうしたらいいのか。

相互の理解の促進には英語は欠かせないのは当然だろう。だが必ずしも皆が流ちょうに喋れる必要はない。絶えず努力は必要だが、経験ではゆっくりでも内容があれば聞いてくれる。話にはその人の人柄が出る。話の内容は話し手の人柄を表すと言ってもよい。

外国人と関わる時に大事なのは、「“違い”を尊重、”同じ“を喜ぶ」という心がけだ。

勿論、日本人同士でも皆違う。それぞれが違うことに意味がある。同じからはイノベーションは生まれないとも言われている。自分が他人と違うことを大事にしなければならない。

違いを見つけるには自分だけでは難しい。案外他人の方が「私」を良く知っていることもある。皆違うから、他人から自分の持っていないことを学ぶ姿勢が必要だ。

外国人とはすぐに違いを実感してしまう。“違い“に関心を持ち、敬意をもつことが重要だ。「日本のやり方が当然」だと思わないで、「おかしいな」と思っても、必ずその違いには重要な背景があるはずだと思うこと。エジプトでの経験は貴重だった。違いの尊重と並んで大事なのは、”同じ“を喜ぶ心だ。進んで相手との共通点を探して、共に共感する部分を広げてゆく積極的な関わりが人間関係成功のカギとなる。

1300年間に二人目という千日大回峰を達成した仏教僧がいる。このすごい修行は9年間、毎日険しい48キロ余り山道を踏破し、その後9日間呑まず食わず横にもならず眠りもせずひたすらお経を唱え続けるという大変な修行である。これを達成した塩沼亮潤師のような高徳の僧侶が、「その修行より人間関係はもっと難しい」と言っている。

良き人間関係を築き維持するためには、相応の努力が必要だろう。自分はこれまで出会った「敬服、尊敬する人」について、あの人たちの何が素晴らしいのか考えた。

結論はあの人たちは「爽やかで優しく、逃げず諦めない」人たちだと分かった。

以来、自分も彼らに万分の一でも近づきたいと思って、どうすれば「爽やかで優しく、逃げず諦めない」ように毎日過ごせるかを思い、一つでも行動でできればと心している。「爽やか」を心がけるだけでも難しい。「優しく」というのも決して易しくない。強くならないと優しくなれない。

でもこうした努力を少しでも心がけるかどうかで人は変わり、他人と変わってくる。小さな努力を日々している人は周りの人たちは分かる。努力を怠らない人を押し上げてくれるようになる。何になりたいと並んで「どういう人になりたいか」を今から自分で考えることがとても重要になる。

「爽やかで優しく、逃げず諦めない」は僕からの一つのヒントだ。自分なりに考えてみて、自分なりの将来像をぜひ描いてみて欲しい。

教室内にある40インチくらいのテレビの前に敷いているラグマットに座った10数名の生徒さんたち。自分の机で熱心に聞いてくれた生徒さんたち。皆さんから身に余る感想文を頂き、真剣にお話を聞いてくださったことがよく分かり、頭が下がりました。

お話の後、校長室で美味しい給食(餃子、スープ、牛乳とパン)をご馳走になり、梅の香りに心も軽く梅林小学校を後にしました。

湯澤 三郎

授業の感想