東京消防庁王子消防署へ藤﨑講師を派遣しました。

2月26日に、東京消防庁王子消防署へ藤﨑武彦講師を派遣し、「日本文化と欧米文化の違い~異文化・多文化への理解と共生の観点から~」というテーマで講話を行いました。

藤﨑講師略歴

1944年生まれ。早稲田大学卒後、米国カリフォルニア州立大学経営大学院経営修士号を取得。安田生命保険相互会社勤務を皮切りに、(財)日本生産性本部ワシントンD.C.事務所、中外製薬株式会社等に勤務。明海大学/目白大学/早稲田大学で英語・ビジネス英語指導に携わる。

以下、藤﨑講師の出講報告です。

日時:平成31年2月26日(火)午前10時~11時10分(70分)

講演場所:東京消防庁 王子消防署

講演テーマ:「日本文化と欧米文化の違い~異文化・多文化への理解と共生の観点から~」

1.講演の様子:

署の4階の会議室に制服を着た約90名の署員が集合し、今回の講演の窓口担当者の司会で小生を紹介することからスタート。署員全員起立・礼という極めて規則正しい雰囲気の中で講義は始まりそして終了した。会議室前面のスクリーンには演者が1970年後半、米国ジョージア州プレーンズ市にある米国第39代大統領のカーター氏ご夫妻のご自宅の庭で、ご夫妻と小生が握手している写真を講演冒頭部分のみ写していただき、「小生の記念すべき思い出の写真」として紹介した(尚この写真は3名の日本の衆議院議員が同大統領を訪問し会見を行った際に小生が通訳をやらせて頂いたのだが、署員の方に小生の米国ワシントンDCでの仕事を理解してもらうのに役立った)。  講演中、署員の方々は皆熱心にこちらの方に顔を向けて話を聴いて頂いた。

2.講演の要旨:

  1. 「文化」という言葉は色々解釈できるが、この講演では国民性、価値観、行動様式、特徴という言葉に置き換えたい。
  2. ある国の文化を理解するためにはその国に居住した経験が必要である。小生はアメリカに延べ15年住んだが本日のテーマの「欧米」の「欧」に関しては、出張では何度も訪問した経験はあるが居住した経験はない。しかし米国は初期には英国の清教徒をはじめとして欧州からの移民で出来上がった国家であり、その結果、多くの欧州文化が流入してブレンドした複合文化国家であるので米国の文化に触れることで欧州文化をも一部包含した話となると考える。
  3. このような複合文化国家の米国と、単一に近い民族が作り上げた日本では多くの面で異なる文化、価値観、行動様式が存在する。と同時に文化を語る時に気を付けたいのは、ある国の文化を画一的に「こうである」と断言することの危険が存在する。それを意識しながら話を進めたい。
  4. 米国の国民性、アメリカ人の価値観・考え方・特徴としては1)DIY 2)キリスト教文化(選民意識も含む) 3)自尊心・プライド 4)Mobility(地理的、社会的)5)奉仕心 6)多様性 7)成功への飽くなき欲求 8)スポーツ王国 9)楽天的 10)ウィット・ジョーク 11)オープンネス・拘らない 12)自己肯定・ポジティブ思考 13)ロジカル思考 14)権利意識・主張の強さが挙げられる。 〔ここまで冒頭から40分説明。上記4)については色々な事例を挙げながら説明〕
  5. 次に小生の属していた企業の米国・サンディエゴ研究所(本社派遣駐在員6名、アメリカ人研究員スタッフ約100名)で実施したCross Cultural Trainingの説明をし、その中で行った日米スタッフへの聞き取り調査項目、即ち 『日本人をイラつかせると感じるアメリカ人スタッフの行動』『アメリカ人をイラつかせると感じる日本人スタッフの行動』が、夫々どんな答えを生み出したか、そしてそれらの行動は両国民のもつ文化をいみじくも如実に表していることを署員に説明した。
  6. このCCT調査の結果の結論として、両国のスタッフがより緊密な協力体制・理解を作り出すには自己の行動様式のスタイル・スイッチ(Style Switch)が必要で、それの実行を通して、お互いに相手の理解を得るための努力が必要であるとの点を述べた。
  7. 講演の最後に「アメリカ人(に限らず、外国人一般)と接する際に大事なこととして①会釈・顔の表情 ②スモール・トークの大事さを認識する ③アイ・コンタクト ④first-name basedの打ち溶け合い ⑤正直さ・ホンネ ⑥スピークアップすること ⑦英語でコミュニケーションが少しでもとれるよう基本的な英文を身に付ける大事さを指摘した。

上記⑦の例として

-Hi、How’s everything? (初めの会釈、挨拶)

-Where are you from?  (出身国、出身地を尋ねる)

-Are you enjoying your stay in Japan? (相手に近づく切っ掛けを作る)

-Where do you want to go? I can help you. (相手が行き先への方法がわからない)

-May I help you? Do you need any help? (何らかの手助けを申しでる)

-May I have your name? (少し親しくなった段階で、氏名を明らかにするとき)

等などで署員の方々が、自ら外国人にアプローチしてみることの大事さを強調した(筆者註:勿論このような働きかけに対して相手は凄いスピードで話しかけてくるがそれは次の段階の問題であり、“まず「おもてなしに気持ち」を表す”ことが大事と伝えた)。

3.  講演後の感想:

今回の同署からの出講の要請は司会者によれば「来年は東京オリンピック・パラリンピックなどを控え、王子消防署の署員も外国人に接するチャンスも増えると予測する中、教養教育の一環として今回のテーマのようなことを署員に勉強させたいと考えた」とのことで大変頭の下がる思いがした。

署員の方々の聴講の姿勢は立派で、お喋り、居眠りもなく70分を聴いていただき大変有り難くおもいました。

 

報告者  藤﨑 武彦