慶應大学 国際センターに仲講師を派遣しました。

11月12日、慶應大学 国際センターに仲栄司講師を派遣し、留学生17名を対象に「日本の芸術と文化 ~俳句の特性とその豊かさ~」と言うテーマで講義を行いました。

仲栄司講師略歴:

1978年 上智大学外国語学部ドイツ語学科入学
1982年 日本電気㈱入社 (欧州事業に携わる)
1986年 NEC ドイチュラント社出向(セールスプラニングマネジャー)
1990年 NECイタリア社出向(コーポレートプラニングマネジャー)
1992年 帰任(アジア事業に携わる)
1998年 NECフィリピン社出向(社長)
2000年 帰任(携帯電話、サーバー事業に携わる)
2015年 NECアジアパシフィック社出向(スマートエネルギー事業責任者)
2018年 帰任
2019年 日本電気㈱退社、NEDO入社
2021年 NEDO退社、神田外語キャリアカレッジ入社 代表に就任

以下、仲講師の出講報告です。

1.実施内容

実施日:2022年11月12日(土)13:00~14:30

受講者:慶応大学 国際センター 留学生17名(欧米、中国、アジア系)

講 師:仲 栄司

内 容:日本の芸術と文化 ~俳句の特性とその豊かさ~

2.授業プログラム

日本の芸術と文化を紹介し、体験をとおしてその見聞を深めることが狙いのプログラムで、毎年、前期、後期に分かれて実施。プログラムの取り扱う範囲は、能やアニメや古美術など、日本の伝統芸能や最近の芸術まで幅広いジャンルをカバー。今回は「俳句」についての講義を行ったが、昨年も「国際人をめざす会」から講師を派遣し、「英語落語」の講座を実施した。

3.今回の講義内容

1.はじめ:自己紹介

2.俳句の特徴(約束ごと)

3.俳句の歴史

4.俳句作品鑑賞(松尾芭蕉と高浜虚子)

5.日本の俳句と外国語俳句の共通点と違い

6.受講生が撮った写真から何を感じたかを発表

4.授業の流れ

慶応大学国際センター、菱山講師ご担当の留学生向けプログラム「日本の芸術と文化」のゲストスピーカーとして、阿部講師派遣委員長よりお声がけいただき、「俳句の特徴とその豊かさ」と題して、11月12日、授業を行いました。

当日は、秋晴の美しい日で、まさに「天高し」の一日でした。授業に参加された留学生は17名で、日本語ではまだ理解が難しいとのことでしたので、英語で進めました。また、ビジュアルを用いて説明したり、写真を見て季語を当てるクイズを織り込むなど、できるだけ双方向の授業を心がけました。俳句は日本語の世界そのものなので、まず俳句の特徴を説明し、その上で外国語のhaikuとの共通点、相違点を述べました。

俳句の特徴は、有季定型、すなわち、季語がある、五・七・五の定型詩で、それが約束事になっています。haikuとの違いは、まさにこの「季語」と「五・七・五」になります。これらは長い歴史の中で日本人が蓄積し、構築してきた世界観とリズムなので、外国語ではどうしても醸し出せないものです。しかし、外国語のhaikuは、俳句と「短詩型」という共通項をベースとし、3つのフレーズで詠む短詩を追求しています。

 

俳句の歴史や松尾芭蕉、高浜虚子の俳句作品を鑑賞したあと、留学生から一週間前の授業時に撮った写真を披露いただきました。一週間前の授業ではフィールドワークということで、根津、谷中、千駄木を訪れたそうです。谷中神社や猫を供養しているお店、日本の伝統品とモダンなものが混合して売られているショップなど、一人一人のユニークな視点から切り取られた写真を提示いただき、なぜその写真を撮ったのか、そのとき何を感じたのかを発表していただきました。ここでの意義は、詩をつくる前に根っこの想いをしっかり見つめることが大事であることを理解してもらうことにありました。

最後の写真のパートは、菱山講師と事前に相談した際、一週間前の授業でフィールドワークをするので、そこで撮った写真をベースにhaikuに挑戦してもらいましょう、というアイデアが生まれたことから実施しました。Haikuへの落とし込みまでは授業ではできなかったのですが、菱山講師から次回までの宿題として留学生のみなさまに通知されました。菱山講師は、授業中、私の説明から俳句のポイントを白板に書いたり、五・七・五のリズムをゆっくりと発音してみせるなど、適宜サポートしてくださいました。菱山講師のさりげないサポートのお蔭で授業がとてもやりやすくなり、留学生のみなさまの理解の一助にもつながったと思います。また、阿部様からもクイズ形式を取り入れたらと事前にご示唆いただいたり、当日は授業風景を撮影いただくなどご支援いただきました。

5.所感

菱山講師からその日の内に、「留学生も私もとても楽しく学ばせていただきました」とのお礼のメールをいただきました。留学生のアンケートには、「恋猫」が春の季語という説明がおもしろかった、とか俳句に興味が出て作ってみたい、といった感想が述べられていました。また、双方向で展開したことも興味を喚起したようです。私を very passionateでhelpfulと感じていただいた留学生もいて、私の俳句への想いが少しは伝わったかなと嬉しく思っています。

留学生のみなさまに英語で俳句を説明することで、あらためて俳句が日本人の心に根差した文芸であること、また、日本語独自の世界であることを痛感するとともに、だからこそ俳句の世界観をもっとグローバルにも伝えていきたいと思いました。戦争や自国のナショナリズムが再び横行するこの世界に、小さな生物に目を向け、自己を自然の中に溶け込ませて詩にする俳句という文芸は、きっと何らかの道筋を今の世界に示し得るのではないかと私は思っています。利他の心が生まれ、自分が社会の大きなつながりの中にいる自覚が持てることで、「成長」「成功」「自己責任」といった価値観に縛られた社会から脱却できる道筋が見えてくるものと確信しています。

今回、このような機会をいただきましたことにあらためて感謝申し上げます。

受講生アンケート①  受講生アンケート②

講演資料