東京都新島、式根島中学校に須藤講師(高座名:鹿鳴家英楽さん)を派遣しました。

2016年12月5日、6日、東京都新島村立新島中学校、式根島中学校に、当会講師の須藤達也 – 高座名:鹿鳴家英楽(かなりや えいらく) – さんを英語落語講演の講師として派遣しました。

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以下、須藤講師の出講報告です。

12月5日、6日と、新島中学、式根島中学で英語落語の講演を行ってきました。50分授業を二コマ使っての講演で、前半は落語についての解説と小噺体験、後半は「時そば」の解説と生徒による実演と私の実演。その後、日本の唱歌、「ふるさと」を日英両語で全員で歌って終わりました。

前半の落語解説は、落語の簡単な歴史と演じる際のポイントを解説しました。落語の始まりは、お坊さんの説法であったこと、僧侶、安楽庵策伝が17世紀初頭に書いた「醒酔笑」が、日本の最初の小噺集で、策伝が「落語の祖」と呼ばれていることなどを話しました。演じるポイントは、上下(かみしも)の規則、扇子と手ぬぐいの使い方、登場人物の演じ分け、などを解説しました。

小噺は、私が「英語いいね!」という神田外語グループのサイトに載せている英語小噺を事前に生徒が見て、好きなものを演じる、という形をとりました。このサイトに、100ほど英語小噺がアップされています。生徒たちの小噺の選び方自体が興味深かったし、自主的に選ばせると生徒もよりやる気が出ていいと思います。ともかく、落語は演じる時は一人ですから、短い時間であっても、一人ひとりがスターになれます。この点、野球と似ています。大人数でやる芝居がサッカーとすれば、落語は各人がバッターボックスに立つ野球です。普段おとなしい子でも、高座に上がったらあんなに輝くんだ、という発見を教師がすることもあります。皆、上手に出来ていました。

10分のお休みを挟んで、後半はメインの「時そば」(Time Noodles)です。まずは、時そばの背景を説明しました。時そばを理解するには、江戸時代の時間と通貨のことを知っておく必要があるので、パワーポイントのスライドを使いながら、その解説をしました。

時そばでは、最初の男が「九つ」という時間にそばを食べに行き、次の男が「四つ」という時間に食べにいくところから、最後のオチにつながります。英語では、それぞれ、nine, fourと訳していますが、実際には九つは夜中の12時で、四つは10時。その差は二時間です。言葉は訳せるけど、背後にある文化背景までは訳せない。そんな話をしました。

次はお金です。江戸時代、そばは16文でした。庶民がよく使っていた通貨は「文」で、主に一文銭と四文銭を使用していました。四文銭を持っていれば、四文銭4枚でそばのお代を払ったわけです。時そばでは、主人公が四文銭を持っていなかったので、細かい一文銭16枚で払いました。この部分、落語をやっている人でも結構知らないのですが、時そばを理解するには重要なところです。

さて、いよいよ生徒の実演です。時そばは、中学3年生の英語の教科書に短縮版が載っており、生徒たちがこれを事前に学習し、何人かが発表してくれました。声の出し方、上下の切り方、目線など、直すところはたくさんあったものの、高座に上がった生徒さんたちは皆、一生懸命やっていました。うまくやることよりも、一生懸命やることが大事だと私は思っています。生徒の実演の後、私がフルバージョンの時そばをやりましたが、事前に「時そば英単語」を用意して生徒に配布してもらっていたので、生徒もわかりやすかったと思います。

式根島中学では、3年生の時そばに加え、2年生が、狂言の「附子」(Pot of Poison)を演じてくれました。ある家の主人が、「附子(ぶす)という猛毒が入っている桶には近づくな」と使用人である太郎冠者と次郎冠者に言って外出するのですが、二人は気になって仕方がなく、ついにそれを食べてしまうという話です。先生が主人役、生徒が使用人役でしたが、台詞廻しだけでなく、小道具などもよくできていて、感心しました。この作品は中学二年の英語の教科書に出てくるそうで、最近の英語の教科書は日本文化を意識したものになっていることがわかります。良いことだと思います。

最後は、私のウクレレ伴奏で「ふるさと」(My Country Home)を全員で合唱しました。

公演は最初が新島中学でした。公演が終わってから、式根島に向かう船の出航まで少し時間があったので、授業見学をさせていただき、その後、浅見先生に島の観光案内をお願いしました。何と言っても、新島はモヤイ像が有名です。新島中学の校庭にも大きなモヤイ像が建てられており、生徒がつくった小ぶりの像も校内にたくさん飾られていました。渋谷のモヤイ像も新島から寄贈されたものです。

新島から式根島に向かう間、波が高く、ひどく船酔いしたので、その日は民宿で十分に休養。翌日の式根島中学の公演に備えました。翌日、公演が終わってから式根島中学の澁江先生に島の案内をしていただき、その後、船で新島に戻り、新島からセスナ機で本土に戻りました。

私の公演は、だいたい聴衆参加型ですが、今回は、両校とも生徒たちが事前に十分な準備をしてくれたため、その分、より充実した会になったと思います。また、両校の担当の先生とメールや電話で事前に十分な打ち合わせができ、当日スムーズに事が運びました。新島の子供たちと一緒に給食を食べたのも良い思い出になりました。

生徒感想文

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