春日部共栄中学校に芹澤講師を派遣しました。

7月13日、春日部共栄中学校に芹澤健講師を派遣し、中学1年生を対象に「国際社会から見た日本」というテーマで講義を行いました。

芹澤健講師略歴:1976年生まれ。一橋大学商学部商学科卒  2005~2008年 伊藤忠中近東会社ドバイ駐在、中東諸国、アフリカ諸国におけるエネルギートレードビジネスに従事  2011~2013年 伊藤忠商事ロンドン事務所駐在、ヨーロッパ、アメリカにおける原油・石油製品・LPGのトレードビジネスに従事 現在、伊藤忠商事(株)からの出向で、(株)ジャパンガスエナジー勤務

以下、芹澤講師の出講報告です。

受講者 :春日部共栄中学1年生の皆様

日時    :2021年7月13日(火)

場所  :春日部市春日部共栄中学校にて

テーマ  :国際社会から見た日本

 

今回で3回目の講義として、講師を務めさせていただきました。

まだ中学1年生の若い生徒さんでしたが、将来、何かの機会にいくらかでもお役に立てばと思いつつ、実際に私が海外と仕事をしていく上で感じたことを契機に、日本と諸外国との企業活動における比較文化の話を中心にしました。

(導入・自らの中高時代、海外に対する興味を持ったきっかけ)

自分が高校生だった頃、何を思っていたか思い出しながら、主に受験生活で暗記中心の勉強や、割と厳しいルール、校則に息苦しさを感じたこと、いつか海外にでて、違う世界の空気を吸ってみたい、そんなことを思い始めていたことを話しました。海外で仕事してみたい、生活してみたい、そんな思いを思い立ったきっかけの一つである、海外の音楽(カーペンターズの青春の輝き)を画面で流し、一緒に聞いてもらいました。

(実際に駐在した、ドバイ(UAE)、ロンドン(イギリス)の話)

世界では宗教の影響を受けている人がいかに多いかをお伝えしました。ドバイが繁栄している理由を、自説でありますが、ドバイからみれば近隣にあたるインドからの移民が大量に移住していること、その背景には、UAEはイスラム教国でありつつも、自由なお国柄であること、インドでいまだに根強いカースト制が存在し、国外で自由に働きたい、という欲求にこたえているのが、ドバイであることを話しました。イギリスでは、中東に第一次世界大戦を境に、実にしたたかな外交を繰り広げてきたこと、古いことを尊ぶ日本とはやや違う成熟したお国柄であること、個人の自立が進んでいること、数々のスポーツを世界に広めたソフトパワー大国であること等をお話しました。

(日本と海外との比較)

いくつか対比形式で、日本と私の経験した中東、イギリス、アメリカの国々の文化の比較をエリンマイヤー氏の資料を使い行いました。

例えば

・上下関係を気にしすぎる日本人・さほど気にしない北欧系外国人

・全員の同意を重視する日本人・全員賛成を求めないトップダウン方のアメリカ人、中国人

・若いころで勉強が終わる日本人・大人になって必要に応じて頑張る外国人

・日本語がハイコンテクスト系の言語でもあり、アメリカとは完全に逆の世界であること

・国によって異なるセイフティーネットによる働き方への影響

資料では良い悪い、という表現を使っていますが、良い悪いではなく、違うものということで理解してほしいことをお伝えしました。

(仕事の進め方の話し)

ジョブ型vsメンバーシップ型の仕事の進め方の差についても話し、メンバーシップ型は日本で相当浸透している働き方であり、ジョブ型を多く採用する海外企業との差を説明しました。また、専門分野がそれぞれに特化する傾向の中、いずれ皆さんも一つ何か専門分野を持ちつつ仕事をしていかなければならないことや、そうは言っても、横と歩調をあわせ、すり合わせをしながらプロジェクトを完遂する仕組みになっていることを説明しました。また、社会に出てからがむしろ勝負で、競争することからは逃げられないこと、社会に出てから都度、学校に入りなおす等の研鑽が必要なことなどを、当方が経験したアメリカ人のプロジェクトのパートナーの例に話しました。

(本の紹介)

いくつか、皆さんに読んでほしい本をあげさせてもらいました。リストは先生にお渡しし、非常に難解な本も含まれていますが、いずれは読んでもらいたいと思い中学1年生向きではないものも含め、列挙させていただきました。

(日本のバブル期と現在との差の話)

90年代と今日の時価総額ランキングの差を使い、今との比較を行いました。そのような差を生んだ確たる原因探求は授業のスケールからははみ出しており、やや問題提起で終わってしまいましたが、スピードが重要な商売の世界でこのような差が生まれていることをお話ししました。

(失敗、企業再建の話)

ごくさわりのみとなってしまいましたが、うまくいっているときは、誰でもできるが、しんどい状況を打破することが一番重要で、個人のレベルでも企業のレベルでも根っこは同じということで、上杉鷹山、土光敏夫、野村監督等の例をとってお話をしました。また易経の陰と陽のような考え方がすでに紀元前800年頃から存在しており、失敗の中に成功の萌芽があり、成功の中に腐敗の萌芽もあることを当時の人間が分析していたことを話ししました。

(心の研究)

本田宗一郎の話をし、モノを研究していたかに思えるが、実は人の心を研究するところと本田氏が話すように、自らの心を探求が重要であることを話しました。自分が何に興味があるのかがよくわからないというのが一般的だと思われることに対して、現場にでて本物に触れ、心を突き動かさられるような経験が必要だということを話しました。

(本の紹介)

現場にでて感動をもらうことが一番重要なのですが、そんな時間も機会も限られているので、本を読み、自らの頭で考える以外にないことをお伝えしました。そこでいくつか、皆さんに読んでほしい本をあげさせてもらいました。リストは先生にお渡しし、中には難解な本も含まれていますが、いずれは読んでもらいたいと思い中学1年生向きではないものも含めて列挙させていただきました。

(若い皆さんへのメッセージ)

・今後、日本語を理解する人間が大幅に増えない世の中で、海外により興味を持ってほしいこと

・ネット社会だからこそ本物に触れること

・人間どこまでやっても満足というものはないので、まずは、自分自身とは何か探求してほしいこと

などを最後にお伝えして終わりました。

(感想)

中学1年生でまだまだこれからどういう人生を送るのか見通せないような年頃の皆さんに何を話すべきか、どのレベルまで掘り下げるべきか悩んだのですが、変に加減することなく普段感じていることをほぼありのままにお伝えさせていただきました。

全般を通じて、文化が違うのであって、他の文化が良くて、日本が悪い、またその逆という事もなく、ただ違うだけという事実を知ってもらいたくてお話をしました。違うという事実を知り、事態にのぞめば、もし反応が期待とは違ったとしても、感情的にならず物事に対応できると考えたためです。

年齢を重ねても多様な価値観を受容できる、精神的に豊かな人材を育てるためには、若い頃から育ってきた背景、習慣を客観的にみられるような文化比較を経験できる世界に身を置くことが重要であり、日本という比較的同質な価値観の中だけで生きていくわけにはいかない環境が今後ますます予想される中、日本の若い世代のエリート教育には、そのような場の提供が必須だと思われます。春日部共栄中学校のように、若い年次から海外を意識しながら、外部の講師を招き多様な話を聞かせるというのは、必ず生徒さんの将来の精神の豊かさにつながるものであり、大変意義深い取り組みだと思いました。

まだまだ若い中学生の皆さんですが、今回の話が少しでも皆さんの心に届けばと思いお話しさせていただきました。途中から真剣になっていく生徒さんも見られ、勇気づけられました。このような環境を整えていただきました皆様に感謝申し上げます。

以上

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