大阪夕陽丘学園高校に阿部講師がオンライン出前授業を実施しました。

1月28日、阿部清講師によるオンライン出前授業が大阪夕陽丘学園高校にて実施され、「日米間の国際交流プログラム」~ 将来の国際人を育てるためと子供たちの社会貢献(草の根の外交)~ と言うテーマで講話を行いました。

阿部清講師略歴: 1946年生まれ。 横浜国立大学経済学部卒、1969年4月 第一銀行入行  (のちの第一勧業銀行、みずほ銀行)、1975年4月 西ドイツ留学派遣(マインツ大学)(2年間)、1980年10月 フランクフルト駐在事務所次席駐在員(5年半)、1991年4月 スイス第一勧業銀行副支配人(3年間)、1994年4月 帰国後、支店長、検査部検査役、2001年6月 古河不動産取締役、古河機械金属不動産本部副本部長、2007年3月 退職後、自営業(不動産管理)、2009年4月 横浜市立矢部小学校PTA会長(2年間)、現在、横浜市立矢部小学校 地域学校協働本部「きずな」会長

以下、阿部講師の出講報告です。

1.実施内容

実施日:2022年1月28日(金))10:50~11:40(第3限)

受講者:大阪夕陽丘学園高校 1年7組35名

講 師:阿部 清

内 容:「日米間の国際交流プログラム」~将来の国際人を育てるためと子どもたちの社会貢献(草の根の外交)~                                          その他:本出前授業はDenmark株式会社 代表有澤和歌子氏とのコラボ案件

2.コラボの経緯

①有澤和歌子氏が代表のDenmark株式会社は2021年3月創業でオンライン授開始は2021年7月、以来、日本の子どもたちの透明な箱を取り除く教育サービス「Out of Box」をスタートし、スポンサー付きオンライン無料寄付講座を展開中である。当会の活動と類似しており関心があったこと。       一方、有澤和歌子氏自身も当会のHPを見て当会に関心を示す。                 ②横浜のコーディネーター仲間の紹介により本年1月上旬に有澤氏と面識を得て、いろいろと意見交換することになった。                                     ③有澤氏は1月25~30日、大阪夕陽丘学園学校で1年生の各クラスを対象に合計6回連続でオンライン出前授業の計画であった。                                 ④そこで有澤氏から、私が地元小学校で10年来取組んでいるワシントンDCの公立学校との「国際交流プログラム」の話を講師として、有澤氏(ワークショップ担当)と一緒に参加してほしいとの依頼があった。                                        ⑤Denmark株式会社と当会との今後のコラボを展望して、今回はその嚆矢(トライアル)として引受けることに至ったもの。

3.オンライン出前授業の内容の概略:

50分の授業の内訳は、5分(クラス担任の話)20分(講師の話)20分(ワークショプ)最後の5分(まとめ)。講師の20分の話の内容は以下のとおり。

1.はじめ:自己紹介

2.日米間公立小学校の国際交流プログラム

3.子どもたちはどんな力をつけたのか?

4.子どもたちも社会貢献、草の根外交ができる

5.なぜ海外に行くのか? 海外で何が学べるのか?

6.将来の国際人をめざすためのヒント

今回の講話の問題提起は、「インターネットで調べれば大抵のことを知れる時代。それでも現地に行って、実物・本物に触れることの意味は何でしょうか。私が10年にわたり実施した日米の公立小学校の交換留学とホームステーでの子どもたちの様子から、その意味を皆さんと考えたい」というものでした。                                            まず、子どもたちがホームステーで過ごす10日間の国際交流プログラムとはどのようなものなのか? 写真のスライドショウーで簡単に説明した。                          なお現地9日間の滞在ながら最後の別れ・米国出発のシーンは、以下のとおり感動的な光景であった。米国出発時は別れを悲しむかのような大雨の天候。ホスト母親とハグして涙の別れ、バスに搭乗しバスが動き出した瞬間、突如一人のアメリカの児童が走りだし、2人、3人と次々に多くの児童たちが土砂降りの中、ずぶ濡れになりながらバスを追いかけて一生懸命に大きく手を振り、日本の児童たちもバスの窓から身を乗り出しながら大きく手を振って別れを惜しんだ光景は、まさに映画のシーンのようで9日間の滞在を締めくくる感動的なものであった。たった9日間でしたが、こんなにも濃密で深い友情を育んだのかと目頭が熱くなった。

では、「子どもたちはどんな力をつけたのか?」                        米国到着後の週末は、子どもたちは各ホストファミリーにたった一人きりで滞在。時差や疲れもあり、しかも英語が全く通じず、誰にも頼れず連絡もできない孤独感でホームシックになる。土曜日は涙ながらにそのままベッドに。翌日目覚めても状況は変わっていない。元気を取り戻し、自分で考えて見る。「そうだ出発前のオリエンテーションで家族のアルバムを作り、それをホストファミリーに見せるように教えられた!」「自分で作った単語帳もあること」を思い出す。それから自分で一歩を踏みだしてみた。アルバムを見せながら「マザー、ファーザー、マイホーム、マイスクール」と話しかける。   ホストファミリーは嬉しそうに頷きながらアルバムを見る。ホストブラザーは「ゲーム、ゲーム」と言いながら自分の部屋に連れてゆきふたりでゲームを始める。「イェス、ノー、オーケー、サンキュー」と単語を連発しながら身振り手振りでコミュニケーションをとってゆく。             このようにホームシックに罹った子どもたちは、自分で考えてまず一歩を踏み出し、自分ひとりで問題を解決する術を模索し、数少ない英単語を駆使して表情、身振り手振りの全身を使ってコミュニケーションをとってゆく。

9日間のホームステーや体験入学を通じて、「Thinking by oneself」「Problem solving ability」「Communication ability」という将来の国際人の原点を身につけたことになった。

「子どもたちの適応能力は素晴らしい! 子どもたちの潜在能力は無限の可能性を秘めている」と随行者の喜び。「一回りも二回りも逞しくなって自信がついたように見える」と帰国後の保護者の驚き。そして何よりも「中学生になったら英語を頑張って将来海外で活躍したい」と卒業式でのコメントをした児童。それぞれが「国際交流プログラム」の成果を物語るコメントである。

それでは、次に「子どもたちも社会貢献、草の根外交ができる!」とはどういうことなのか?
渡米前の子どもたちにとってのアメリカは、漠然として他人事、無関心に近い。しかし、渡米後の子どもたちは、アメリカを見る視点・具体的な座標軸を持つようになった。それは「自分が家族の一員として過ごしたホストファミリーとその住んでいる町、体験入学した姉妹校や一緒に遊んだ公園やピングセンター、週末に見学したワシントンDCの街」などである。そうして一緒に暮らすことでアメリカの社会問題が子どもたちにはまさに「自分事」になる。

例えば「黒人差別問題(BLM)」は、アフリカ系黒人のホスト家族にホームステーした子どもは「自分事」ととらえる。「メキシコ国境の壁の問題」は、メキシコ中南米のホスト家族にステーした子どもは「自分事」になる。「トランプ支持者による国会議事堂乱入問題」は、子どもたちがホスト家族と見学したので「自分事」になる。

このようにして、結果として日米間の国際理解につながってゆくことになる。

さらに日米の子どもたちは、その後中学生・高校生・大学生になっても交流は継続して、アメリカに対する好奇心が広がってゆくことは、まさに草の根外交に寄与することになる。

それでは、「なぜ海外に行くのか? 海外で何が学べるのか?」                 在米日本大使館を訪問した際の2等書記官の発言が印象的であった。「小さい頃、海外で過ごしたり海外と接する機会があり、それが原点となり外交官になった。小学生でこのような体験をした君たちの中からも外交官になる人がいるかも・・・!」子どもたちは「国際交流プログラム」に参加して自分を再発見し、自分の隠れた資質や能力を発揮するチャンスとなった。また、現地校に体験入学して初めて日本との違いを発見し、まさに「異文化・多文化」の体験をした。国際色豊かな現地校で「多民族国家」を現場感覚で身をもって実感できた。海外に現地に行ってみて初めて「日本との違い」が実感できた。

最後に「将来の国際人をめざすためのヒント」とは?                      ①まずコミニケション能力の涵養、「対話の重要性」「論理的主張を育む」ことが必要。グローバル化した世界では相手に自己主張して自分の考えを伝えることが重要である。ドイツの家庭・社会では「沈黙は金」ではなく「沈黙は無能」であり、常にYesとNoをはっきりさせる。自分の意見・提案をハッキリ表明しないと評価されない。姉妹校の授業も討論が重視される。

②異文化・多文化との共生の国際理解マインドの育成が必要で、「価値観の多様性」と「違い」を認め、レスペクトする精神が重要である。

③外国語(英語)を学ぶ意義は、「コミュニケーションのツール」を磨くことは大事であるが、ことばの裏にはその国の生活・文化があり、外国語を学ぶことは異文化・多文化の理解に資する。英語を学ぶと自分の自信・武器となり、外国人に遠慮がち・卑屈にならない。

④知的ハングリー精神とモティベーションを育むこと、常にアンテナを高く張って好奇心の感度を高めることが重要である。これからの高校生生活をこの4点を意識して過ごせば、皆さん、きっと将来立派な国際人になれることを強調して講話を結んだ。

後半のワークショップは、有澤氏が実施。まず最初はアイスブレークで、「最近はハマっていること。なぜそれにハマったのか」をグループのみんなで話してもらった(発表の必要はなし)

次に、「現実的には難しいけれど、自分でできればやってみたいこと」を話し合ってみること。「やってみたいこと、なぜ難しいと思うのか?具体的な事例があれば考えてみてください」グループでシェアして一人が発表すること。

生徒の発言は、「ベンクラゲの若返りを図りたい」「ドバイの空を飛びたい」「ものをほしいだけ買いたい、楽器が欲しい」「ゲーム・アニメに入ってみたい」など高校1年生の子どもっぽい突飛な発言もあったが、「海外に住みたい」「留学したい」「世界一周していろんな外国に行きたい」など、本日の講話の影響もあったのかなあ~と思われるような意見もあり、少し嬉しい気分になった!      有澤氏からも「透明の箱から出て願いをかなえるよう」「EUの大学にはエラスムス制度という留学制度がある」ことなど説明してエールを送った!生徒からの具体的な質問はなかったが、有澤氏と講師の私とで2~3の質問・対話を交わしてワークショップを絞めくくった。

 以上

振り返りシート

日米間の国際交流プログラム_プレゼン資料