2022年12月16日(金)、横浜市立大道小学校に湯澤三郎講師を派遣し、この春卒業する6年生を対象に「飛び出せ!輝く自分発見の世界への旅へ!」と題して講演を実施しました。
湯澤三郎講師略歴:(一般財団法人 国際貿易投資研究所 (ITI) 顧問) 1940年、横浜生まれ。 栄光学園中学・高校から早稲田大学 政治経済学部へ進学。1963年、日本貿易振興会 (JETRO) に入職、米州課長、海外調査部長等を経て理事に就任。この間、スペイン、エルサルバドル、ペルー、米国、ブラジル駐在。エジプト通産大臣輸出振興アドバイザーを歴任。 1999年、在エルサルバドル特命全権大使、2003年帰国しJETRO 特別顧問。2011年(一財)国際貿易投資研究所 専務理事 兼 『世界経済評論』編集長。 2019年 理事長、2021年7月より現職。 NPO法人 国際人をめざす会 講師(海外駐在20年超の経験)
以下、湯澤講師の出講報告です。
12月16日(金)11時半から12時15分まで45分間、横浜市立大道小学校を訪れ、「飛びだせ!輝く自分発見の世界への旅へ!」と題して約50名の6年生にお話ししました。 段取りを取り付けて頂いたのは阿部 清・派遣委員長で、同校では岡 望さん、穴沢里美さんお二人の地域コーディネーターのお迎えを受けました。お二人と阿部さんとは市立小学校のコーディネーター仲間ということでした。
大道小学校では加藤和之校長と6年生担当の千葉拓哉先生にご挨拶して、6年生の待つ体育館へ向かいました。お二人のコーディネーターが手早く壇上に大型のスクリーンをセットし、移動マイクで生徒さんが床座りするなかに入ってお話を始めました。パワーポイントの画面送りの係りは阿部さんが引き受けてくれました。
限られた時間内でなんとか記憶に残る内容をと考えて、話の要点を三つに絞りました。自分らしさの発見、自分一人でできることは少ない、“どういう人になりたいか”も考える、という三点です。これからは国内にいても外国人と働くことが普通になる、世界はびっくりする多様性に満ちていると言う例を、エジプトでの経験を話すことから始めました。
自分らしさを発揮できれば人は自ずと輝き応援者も増える。自然界の草花、身近な猫でさえも「らしく」精一杯、一生懸命それぞれ生きて素晴らしい自然を作っている。大自然はその意味で私たちの素晴らしい先生だ。でも人の「自分らしさ」は自分で発見するより、案外他人が見つけてくれたり、新しい経験によって発見することが多い。アフガニスタンで25キロの運河と堀り、1600本の井戸を掘って砂漠を緑野にして貧困農民を救った中村 哲さんというお医者さんもその一人だった。アフガニスタンで診療で出会った貧しい農民が福岡のお医者さんを変えた。ワールドカップで活躍した長友選手も「自分を信じてくれる存在が自分を変えた」と言っている。人との出会いを大事に考えることが自分らしさ発見へとつながるのです。
次に、「自分らしさ」を発揮して将来何になりたいかを考え、実現するためには自分一人ではできない、必ず人の助けや協力が必要だということです。ノーベル賞をもらった大村 智さんという学者も、アフリカの難病の治療薬発見のためには多くの研究者の協力があって初めて実現した。総理大臣も社長も、自分一人でできることはとても少ないのです。
周囲の人に助けてもらう、応援してもらう、一言では人間関係というと言うことになりますが、これが夢や希望の実現にはとても大事になってきます。仙台の慈眼寺というお寺の塩沼亮潤さんというお坊さんは、1300年間で二人目というとてつもない荒行を果たした高僧で、1年で120日間毎日48キロの山を踏破し、これを9年間即千日続けたという人です。これだけすごい修行をした人が「千日回峰より人間関係の方が難しかった」と言っている。
何もせずに人間関係が上手くゆくことは難しいでしょう。小さなことからまず自分が一歩踏み出すことが大きな意味を持ちます。それを易しく言うと「お早う、おめでとう、有難う、ごめん、宜しく、どうぞ」となります。全部やってみるのが大変なら、「お早う」だけでもいいのです。「お早う」は挨拶を表します。挨拶はできそうで案外、いつもきちんとしていないかもしれない。ある中央官庁は不祥事の後の改革で、最初に提案したのは「挨拶をしよう」だった。それだけ挨拶をする人が少なかったというわけです。挨拶する人は輝きます。輝く人に応援する人が集まります。
最後に「どういう人になりたいか」が「何になりたいか」を実現する時にとても大事になるという話をします。どんなに偉くなっても、「どういう人になりたいか」を同時に考えていないと大きな失敗をしたり、大恥をかいてしくじることになります。例えば大谷選手は大リーグで子供から大人まで幅広く愛されるヒーローになっていますが、大谷選手は既に高校1年生の時に、「どういう人になりたいか」をきちんと目標を書いていた。大谷君は一流の野球選手、投手になりたいと「目標設計」の表に書いている。ただ大谷君のすごいところは、表に見るように「人間性」「運」の欄に「人間性、礼儀、愛される人間、信頼される人間、思いやり、感謝」などを目標にしている。大谷選手は試合中によくグランドのゴミを拾い、観客はこれを観て感心していますが、既に高1の目標設計のなかに、「ゴミ拾い、挨拶、部屋掃除,審判さんへの態度、応援される人間になる」と掲げて実行してきたわけです。自然に身に着いた習慣が多くのファンの心に響いたのです。
皆さんもこれから「どういう人になりたいか」を少しずつ考え始めてください。目標を決めて少しずつでも努力する人は、必ず輝きます。そうでない人との違いがはっきり現れ、自分らしさが少しずつ形造られることになります。
新しい人、出来事との出会いが新しい自分らしさを引き出してくれるという意味で、中学は社会と世界へ飛び出す第一歩です。人とは違う自分を発見すると言う意味で、新しい学科は自分の可能性や興味を発見する世界を広げてくれます。誰でも必ず輝くことを信じて中学校に進んでください。
慌ただしくお話を終えて、岡さんのご案内で学校に資料館を見学しました。大道小は戦争前に創立された歴史を誇る学校ですが、さらに地域が農村だった時代の日常の農家の農具、暮らしの用具などを展示する立派な郷土資料館でした。これほどの豊富な歴史資料文物を擁する学校はないでしょう。窓外から見えた池は、創立時のたっての希望で湧き水を利用する形で作られ、その後井戸水で運用されている水生昆虫、小動物には恵みの命の池でした。