横浜市立下野庭小学校に湯澤講師を派遣しました。

3月8日、横浜市立下野庭小学校に湯澤三郎講師を派遣し、卒業を控えた6年生に【「自分らしさ」は世界一の宝もの 「みんなちがって、みんないい」を生きる旅に出る!】というテーマで講演を行いました。

湯澤三郎講師略歴:(一般財団法人 国際貿易投資研究所 (ITI) 顧問)1940年、横浜生まれ。栄光学園中学・高校から早稲田大学 政治経済学部へ進学。1963年、日本貿易振興会 (JETRO) に入職、米州課長、海外調査部長等を経て理事に就任。この間、スペイン、エルサルバドル、ペルー、米国、ブラジル駐在。エジプト通産大臣輸出振興アドバイザーを歴任。1999年、在エルサルバドル特命全権大使、2003年帰国しJETRO 特別顧問。2011年(一財)国際貿易投資研究所 専務理事 兼 『世界経済評論』編集長。2019年 理事長、2021年7月より現職。NPO法人 国際人をめざす会 講師(海外駐在20年超の経験)

以下、湯澤講師の出講報告です。

生徒さんへのお話の後、振り返って「もっと分かり易く、心に残る内容や話し方はなかったか」と自問することが常です。昨年12月16日の横浜市立大道小学校への出講の後、阿部派遣委員長から今回の下野庭小への出講依頼を受けた時、やはりこの宿題に取り掛かることになりました。結論は①タイトルをもっとテーマに沿って簡潔にまとめる②生徒さんに身近な例示の紹介③内容のポイントを三つにする、などが新たな改善の気づきでした。これに沿ったタイトルは「”自分らしさ”は世界一の宝もの」―”みんなちがって、みんないい”を生きる旅に出るーになりました。お話の内容のポイントは①自分らしさの発見②自分一人でできることは少ない③”どういう人になりたいか”かも考える、です。これを将来何になりたい?どういう仕事をしたい、という大テーマの下で話すことにしました。

   

卒業式を間近に控えた下野庭小学校6年生86名に45分間、大画面に15シートのPOP資料を基にお話ししました。自分らしさの重要性や価値の重要性を訴えた点は、その後頂いた生徒さんの感想文のなかで、少なからずの生徒さんが「個性を大事にすることが大切だと知った」と書いてくれました。中学での勉強が進むほど、否でも学力の違いが表われたり、自分の性格を好きになれなかったり、友達との付き合いに問題を生じたりして、心折れそうになる時が誰にもあります。その時に「自分らしさ」の価値をあくまで信じて乗り越えられるようにとの願いを込めた「自分らしさ」でした。金子みすずさんの「みんなちがって、みんないい」(「私と小鳥と鈴と」)の詩全文を冒頭に紹介したのもそうした意図からでした。「ちがう」と言う例に世界の言語、民族、文化のなかで僕がカイロ駐在で体験したアラビヤ語数字の例をあげました。大自然も「違いに満ちた神秘な世界」です。雑草の一つ一つがそれぞれ様々な工夫、形で一生懸命上を向いて生きていて私たちに何かを教えてくれている。植物だけではなく、猫からだって養老先生は「猫に学ぶ」と言っている。違いのなかから私たちは何か大事なことを学べると言ってもよいでしょう。

世界80億人みな違います。ちがうことに何か大事なことがあるはずです。みんなが「自分らしさ」が発揮すれば人も輝き、社会は生き生きと輝きます。ところが、人は自分を知っているようで実は知らない。案外他人や新しい経験が「自分らしさ」を発見してくれるものです。福岡のお医者さんだった中村 哲さんが、アフガニスタンの土漠に25キロの水路を建設して農村の貧困を救ったのも、アフガニスタンの農村で診療ボランティアして栄養失調の農民に出会ったからでした。サッカーワールドカップで活躍した長友選手は「これまで自分の身に起きたことで無意味なものは何もなかった」と言っています。出会った人、新しい経験によって今の自分らしさがつくられたと感謝しています。

将来自分を活かせる仕事をしたいと皆さんは考えていることでしょう。「何になりたい」と分かっている人はぜひその思いを大事してください。まだはっきりと分からない人は、中学校で自分らしさをどれだけ見つけるか楽しみにしてください。それを見つける、つまり「自分の夢、希望をみつけ実現するために」大事なことがあります。それは自分が努力するだけで実現できるものではなく、必ず周囲の人たちの協力、応援、推薦があって実現するものです。総理大臣やノーベル賞受賞した研究者、スポーツ選手など、例外はありません。周囲の人たちは、「輝く人、努力する人、良い人柄の人」に引き付けられ、自然に応援してくれるようになります。まず「自分らしさ」を見つける努力をすることから始まります。自分を大事にするともに、自分らしさを引き出してくれる周囲の人たちを大事することが、出発点でありゴールでもあります。周囲の人を大事にするための具体的なヒントを挙げます。その心を易しい言葉で言えば「お早う、おめでとう、有難う、ごめん、よろしく、どうぞ」になります。言葉は易しいですが、実行はそれほど易しいものではありません。これらのうち、一つ、二つでも実行し続ければ自然と人は輝き、周囲が放っておかずに押し上げてくれるようになります。別の言葉で表現すれば、先の優しい言葉でのヒントは人間関係を良好に保つためのヒントとも言えます。

   

どういう言う人になりたいかという課題は案外忘れられて、何になりたいかだけが目立ちます。ところが「どういう人になりたいか」を考えずに、夢や希望を実現しても、将来大失敗することが多いのです。どんなに偉い人でも、このことを忘れて偉くなった場合、その失敗は取返しのつかない大きさになります。その点で素晴らしいのは、大谷翔平選手です。画面の表は大谷君が高1の時に書いた、将来の目標です。すでに野球選手として傑出した才能を発揮していましたから、表の9項目のうち6項目は大投手をめざした目標です。しかし、3項目が実は「どういう人になりたいか」にかかわる項目について、具体的な実行を目指していたのです。今、アメリカの大リーグで大谷選手の投手としての大記録ぶりや、大打者としての目を見張る成績が評判を呼んでいるのは勿論ですが、全米でライバル選手やそのファンも含めて愛され絶賛されているのは、大谷選手の素晴らしい人間性です。試合中での何気ないゴミ拾い、ライバルチームや相手チームの選手、審判員への心遣いなどは、アメリカ人がこれまでの大リーグ試合では見たことがないシーンで心打つものだったのです。そうした日常の態度は急にやろうとしてできるものではありません。高1の時に書いた自分が目指す姿を目指していつも努力してきたから、アメリカでも自然に態度に表われたのでしょう。大谷選手のズバ抜けた人気の高さは、いち早く「どういう人になりたいか」に気づき、自分なりに努力を重ねてきたからでしょう。

僕がこれまで出会った素晴らしい人たちは、いずれも「爽やかで優しく、逃げずあきらめない」人々でした。大谷選手もそれにあてはまる人だと思います。中学で「どういう人になりたいか」考えるときの参考にしてください。

皆さんにとって輝く中学生活になりますように!!                 了

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