横浜市立矢部小学校に湯澤講師を派遣しました。

3月14日、横浜市立矢部小学校に湯澤三郎講師を派遣し、卒業を控えた6年生に【「自分らしさ」は世界一の宝もの 「みんなちがって、みんないい」を生きる旅に出る!】というテーマで講演を行いました。

湯澤三郎講師略歴:(一般財団法人 国際貿易投資研究所 (ITI) 顧問)1940年、横浜生まれ。栄光学園中学・高校から早稲田大学 政治経済学部へ進学。1963年、日本貿易振興会 (JETRO) に入職、米州課長、海外調査部長等を経て理事に就任。この間、スペイン、エルサルバドル、ペルー、米国、ブラジル駐在。エジプト通産大臣輸出振興アドバイザーを歴任。1999年、在エルサルバドル特命全権大使、2003年帰国しJETRO 特別顧問。2011年(一財)国際貿易投資研究所 専務理事 兼 『世界経済評論』編集長。2019年 理事長、2021年7月より現職。NPO法人 国際人をめざす会 講師(海外駐在20年超の経験)

以下、湯澤講師の出講報告です。

コロナ禍のため、対面でお話するのは3年ぶりだったでしょうか。阿部派遣委員長が学校へのボランティアの会「きずな」で引き続き活躍されており、今回は横浜市でも初めてという冷暖房付きの新装体育館で、卒業を数日後に控えた6年生にお話ししました。生徒さんはそれぞれタブレットを支給されており、事前に送った15枚のPOPスライドと生徒さんへの6画面の資料を予め眼を通せるようなご手配に感服しました。

お話のPOP資料は前週の下野庭小学校で用いたのと同じです。冒頭、生徒さんに「将来何になりたいか、決まっている人?」と投げかけると、数人の手が上がります。「パティシエになりたい」「学校の先生になりたい」・・・・・。でも殆どの生徒さんは「まだ分からない、決め手ない」ようでした。「実は僕もそうでした」と言ってから始めます。中学で自分らしさを見つけられれば、何になりたいかが見えてくる。周囲やほかの人と同じようにしていると、残念ながら自分らしさをなかなか見つけられない。大自然も世界もものすごい‘「違い(多様性)」に満ちている。それぞれの役割の違いがあって全てに秩序が生まれ、全てがうまく回るようになる。例はカイロ到着で出くわしたアラビヤ語の数字。数字は世界で共通だと思い込んでいた間違いを思い知らされました。世界には6000の言語、5000超の民族がいるし、自然界でもスプーン1杯の土に何十億の微生物がいてそれぞれが異なる役割を持っている。身近な草木、虫、犬猫からも学ぶことが沢山ある。

身近な動植物からでさえ学ぶことが沢山あれば、私たち人間社会からは尚更多いはず。周囲の人たち、たまたま出会った人たち、そうした人たちからの言葉や行いから私たちは大きな影響を受けます。同じ言葉を聞いても、響く人と響かない人がいます。自分らしさは案外、周囲の人たちが気づき、育ててくれることがあると日ごろ思っている人には、響き方が違ってくるのです。自分らしさの発見は自分の努力だけではなく、関わった多くの人たちのお蔭でもあると考えることが大事です。福岡のお医者さん中村 哲さんは、アフガニスタンの貧しい農民に出会って、灌漑用運河建設への土木工事に捧げる人生に変わりました。中国の唐時代の皇帝は、傍に「ばかなことはお止めなさい」と言ってくれる人を持つのが眞の指導者だと書きました。サッカーの長友選手は、「これまで自分の身に起きたこと(人との出会いや経験)で無意味なものは何もなかった」と言っています。出会う人々、周囲の人々とお互いにいつも気持ちよく過ごせるようになることは、とても大事なことです。一口にいえば人間関係です。塩沼亮潤さんというお坊さんは、道なき山中を毎日往復48キロ歩き通す修行を1000日続けたすごい人ですが、その人が「人間関係は千日回峰より難しい」と言っています。確かにふとしたことから人間関係は壊れ、もとに戻るのに苦労します。しかし、周囲の人々の蔭で自分らしさを発見できると考えると、自然に人の言葉に耳を傾けることができるようになります。人を大事に思うようになる。いつもそういう心でいれば人間関係は壊れることはありません。僕は自分への注意として「おはよう、おめでとう、ありがとう、ごめん、よろしく」を心掛けるようにしています。これさえできれば(このうち、一つ二つでもきちんとできるようになれば)人間関係で失敗することが少なくなるでしょう。

世の中で有名になった人、高い地位に就いた人が、何かの出来事によって一挙に名誉も、名声も失う例をTVのニュースでよくみかけます。僕の80年の人生のなかで素晴らしい人、頭が下がる立派な人たちに出会いました。その人たちに共通していたのは「爽やかで優しく、逃げず諦めない」生き方でした。それ以来、生涯の僕の生き方の目標はこの短い言葉に集約されています。どれ一つとっても易しいものではなく、毎日なまけたり失敗したりの連続です。しかし、毎日小さなことにもこの心がけを忘れないように努める気持ちが大事だと思っています。

大リーグで活躍する大谷選手も、自分なりに生き方の目標を定めて努力を続けている姿を見せてくれます。画面の表は高1の大谷君が描いた将来の自分の目標です。9項目のうち、6つは野球選手としての技術向上をめざすものですが、3項目の目標は「どういう人になりたいか」に関する項目です。アメリカからの野球中継でも大谷選手が敵味方分け隔てせずに優しく接する姿や、審判員への細かな心遣い、グラウンドで見つけた小さなゴミを拾う姿などは、全米のみならず世界からも圧倒的な賞賛を呼んでいます。3項目のなかには、あいさつ、ゴミ拾い、部屋掃除、礼儀、思いやり、感謝などが見えます。少なくとも高1から毎日そうした態度をとるよう心がけ、それが今自然にできるような「大谷君らしさ」になっているのでしょう。

小さな努力の積み重ねはいずれ大きな「自分らしさ」を形作る栄養になっています。ぜひ皆さんも「どういう人になりたいか」、中学校で人との出会いやできごとを通じて考え続けてください。「爽やかで優しく・・・・」というのは一つのヒントです。自分なり考えに、毎日ひとつでも心がければ必ず「輝く人」になります。

素晴らしいい中学校生活になりますように!