町田市立真光寺中学校主催の「国際交流の日」に、2講師を派遣しました。

さる7月13日に開催された町田市立真光寺中学校の「第37回国際交流の日」に、当会は昨年の実績が評価されて、今年も3年連続で講師2名を派遣することになりました。

同中学校の「国際交流の日」とは、37年前に東京都からモデル校として指定され開始した経緯があり、同校の伝統ある最大のイベントであります。

学習の目的は、「世界の文化・伝統・習慣などを学び考えることで日本への理解を深め、自分たちと世界の人たちとのつながりや生きることについて考える場とする」ことです。

1年生のテーマ「アジアの国々を知ろう」

2年生のテーマ「世界の国々を知ろう」

3年生のテーマ「日本の文化・伝統を知り、世界とのつながりを考えよう」

という各学年のテーマに基づき、当会をはじめ「地球の木」「フリー・ザ・チルドレンジャパン」「JAICA東京」「桜美林 草の根国際理解教育支援プロジェクト」等を含む合計6団体(個人)から講師が派遣されて7の分科会で出前授業が同時開催されました。

当会からは2年生の2分科会に2人の講師が、以下のテーマ(講座名)にて出前授業を実施しました。

野瀬 哲郎 講師:「多文化共生 外国の文化・暮らしの違いに触れる」

仲  栄司 講師:「『世界を知ろう』~アジアの中の日本から~」

各講師は、グループディスカッションを通じた発表やより多くの生徒に質問を投げかけたりするなど双方向の出前授業を心掛け、大いに生徒を刺激しインスパイアするなど、クラスを盛り上げました。

終了後、生徒たちは「将来、米国に行き起業したい」「アジアの国々についてもっと深く知りたくなった」など発言して、講師を喜ばせました。

いずれの講師の出前授業は、先生や生徒たちの好評を博しました。

講師派遣委員長

野瀬講師略歴: 横浜国立大学工学部金属工学科卒 1975年、三井物産(株)に入社し、中国(北京・上海)に合計約14年、オーストラリア(シドニー)に4年駐在 2011年より、中国(寧波・広州)の関係会社に出向駐在を経て2016年に退職 同年、特殊金属エクセル入社、海外事業を統括、その後コンサルティング会社にて中国・東南アジアに展開 2023年より、日本語学校にて若手の外国人に対する教員としての活動を開始

以下、野瀬講師の出講報告です。

日時: 2024年7月13日 (土) 午前 10時00分 ~ 11時00分

講演場所  : 真光寺中学校

講演テーマ : 『多文化共生(外国の文化・暮らしの違いに触れる)』

  • 講演の様子:

町田市にある真光寺中学校で、今回が37回目となる同校の伝統行事『国際交流の日』のプログラムの分科会で、2年生(2年2組)の約20名のクラスで出張講義を行いました。

生徒達は大変興味を持って聞いてくれて、全般的に、海外に関して興味がある様子で、海外旅行経験も半分以上の学生がハワイや韓国、中国への渡航経験ありとのこと。またクラス内には2名の外国人生徒がいて、既に国際化が進んでいることも実感しました。

  • 講演内容:

・ テ-マであるグロ-バル社会での多文化共生は、2020年から3年余り続いたコロナウィルスの世界的な蔓延も一段落(最近、再び感染が急増しているが)、直近で海外からの留学生や訪日観光客が再び増加しコロナで後退した世界のグローバル化が一段と進んでいる。しかし一方で、日本の少子高齢化が深刻な問題になっていて、今後の労働人口が減少して行く中で、日本は好むと好まざるとに拘わらず、海外からの人材を受け入れて、異文化・多文化と共生して行くことが求められることを、用語の解説を加えながら、分かりやすくかみ砕いて紹介しました。

・   発表要旨は下記の4項目。

(1) グローバル社会では、文化の異なる外国人との共生は必要不可欠。

(2) 国が違えば文化の違いは当たり前。

(3) 異文化を知り、それを尊重することが大切。

(4) 日本は今後益々、少子高齢化が進み、単一文化に留まることでの将来はありえない

・   一度確立した世界のグローバル化、世界中に広がったグローバルサプライチェ-ンは、コロナの影響があっても、後戻りすることはできない。今後どんな形に変化するか工夫が必要となる。

・   日本の少子高齢化は今後益々深刻になる。日本の人口は2011年から減少に転じて、2050年には1億人を下回る。日本の平均年齢は48.8歳(2022年)で世界第2位の高齢国。国力は人口に比例することから、今後は海外からの移民を受入れたりすることで、文化の異なる外国人との共生が必要。

・   結論として

➢ 日本の常識が世界の常識とは限らない。日本の文化が世界から異質に感じられることも多々ある。

➢ 先ずは世界を知ることが大事。多文化・異文化に目を向けよう。その為には、海外の人達との積極的な交流を図ろう。

➢ 世界のグロ-バル化と、日本の少子高齢化は待ったなし、これからは多文化との共生が必要になる。

3. 講演後の感想:

中学2年生への講義は、昨年に次いで2度目で、今回の生徒達も実に素直で明るく、こちらからの質問に対するリアクションも良く、大変気持ちよく授業を進めることができました。

海外に関する自由対話では、一人の女子生徒が、将来は米国に行きたいと、それも大学留学ではなく、日本の大学を卒業後に米国に行って起業をしたい、との確りした目標を述べていたのが印象的でした。  

今回の出講で、中学2年生と交流できたことは、大変に有意義で、彼らから大いなるエネルギ-をもらうことができ、久しぶりに心地よい後味が残りました。  

ご尽力頂いた真光寺中学校の関係者の皆様に心から感謝いたします。                                   

生徒感想文 HP掲載(野瀬講師)

仲講師略歴: 1978年 上智大学外国語学部ドイツ語学科入学 1982年 日本電気㈱入社(欧州事業に携わる)1986年 NEC ドイチュラント社出向(セールスプラニングマネジャー)1990年 NECイタリア社出向(コーポレートプラニングマネジャー)1992年 帰任(アジア事業に携わる)1998年 NECフィリピン社出向(社長)2000年 帰任(携帯電話、サーバー事業に携わる)2015年 NECアジアパシフィック社出向(スマートエネルギー事業責任者)2018年 帰任 2019年 日本電気㈱退社、NEDO入社 2021年 NEDO退社、神田外語キャリアカレッジ入社 代表に就任

以下、仲講師の出講報告です。

日時: 2023年7月13日 (土) 午前 10時00分 ~ 11時00分

講義場所  : 真光寺中学校

講義テーマ : 『アジアの中の日本から ~南洋の空気感~』

  • 講演の様子:

町田市にある真光寺中学校で、今回が37回目となる同校の伝統行事『国際交流の日』のプログラムの分科会で、2年1組の約27名の生徒に対し、出張講義を行いました。

 最初に、アジアにどんな国があるのか、どんなイメージを持っているかをグループで話し合い、発表してもらいました。そのせいか、アジアに対するウォーミングアップができ、比較的アジアへのイメージが掴みやすくなったかなと感じました。

総じて生徒のみなさんはよく話し合い、しんどそうな生徒も見受けられず、授業はやりやすかったです。ついつい時間がオーバーしているのも忘れるくらいでした。真光寺中学校がこういう機会を設けていることはたいへんすばらしいと思いました。 

  • 講演内容:

先述のように、最初にアジアの国やイメージを話し合ってもらい、漠としたイメージを基に話を進めたので、そのあとの話の展開が比較的スムーズにできたかなと思いました。

  • アジアの国とイメージ

人口が多いこととユーラシア大陸にみるように、非常に広い地域であることが生徒のみなさんが持っているアジアのイメージの大半を占めていました。また、国では、中国、韓国、北朝鮮、台湾といった日本の近隣諸国の名前が挙がり、東アジアのイメージが圧倒的に強いことを感じました。それ以外ではインドやイラン、サウジアラビア、シンガポール、マレーシア、タイといった国の名前が挙がりました。

  • アジア全般

ひととおり頭の中をアジアで埋めてもらったあと、アジアにどんな国があり、どんな地域があるか、また、アジアの地理的な位置づけを認識してもらいました。また、アジアの風物を写真で提示し、クイズを行いました。シンガポールのマリーナベイサンズの名前は知らなくとも、風景は見たことがあるようでした。また、タイで盛んなスポーツであるムエタイ(キックボクシング)やベトナムのアオザイ(衣服)等はなかなか難しかったようです。アンコールワットもなじみが薄いようでした。

  • 東南アジア

次に、アジアの中でも特に東南アジアに焦点を絞り、仏教、農業、生産拠点として日本と非常につながりが強いことを話しました。どこまで生徒のみなさんが東南アジアのイメージを掴めたかはわかりませんが、私からは特に東南アジアの空気感が魅力的であることをアピールしました。難しいことをあまり考えず、生きていくだけでいいという考え方や日本にいて少し閉塞感を持っている人には東南アジアの開放的な気分がプラスに働き得ることを伝えました。さらに、太平洋戦争のことを日本人として理解しておくことが大事であることも伝えました。

今回の授業で、少しでも東南アジアに親近感を持ってもらえればとの思いから、また、私の説明、体験談をとおして東南アジアのことを少しでも考えてもらえたらと思い、授業を進めました。

主な授業内容は以下のとおりです。

(1)アジアの国とイメージについてグループ討議、発表

(2)アジアについての概要を講義

(3)日本と東南アジアの関係の歴史を大雑把に説明

(4)写真を提示してどこの国かを当てるクイズを実施

(5)東南アジア諸国の概要と特徴を説明

(6)東南アジアへの私自身の想いと空気感を提示

・アジアは東アジアのイメージが強く、台湾問題も叫ばれているせいか、知っている国として台湾の名前を挙げる生徒が多かったです。そのため、なぜ台湾という国が生まれたのかを説明しました。

・人口が多いというのが生徒のみなさんの圧倒的なアジアの印象でした。それは、中国、インドに象徴されているからのようです。他にもバングラディシュやパキスタン、インドネシア等1億人を超える国があること、何より日本も1億人を超える人口であることを認識してもらいました。

・アジアでは、太平洋戦争のことを知っていることは非常に大事であることを強調しました。韓国のカラオケ店で日本人が仕方なく日本の歌を歌ったところ、韓国人同士で乱闘騒ぎになった話をしました。これは戦争による反日感情によるところが大きいのですが、日本人に日本の歌を歌わせた韓国人に対して別の韓国人が怒るという事件でした。一種の戦争の傷跡でもあり、日本人として認識すべきポイントの一礼として話をしました。 

・東南アジアのイメージとして、仏教と農業が挙げられることを述べました。特に、タイ、ミャンマー、カンボジアあたりがそうです。個の穏やかな雰囲気は日本人に合うことを述べました。

・「ドリアン」を知っている生徒が何人かいたのには驚きました。食べたことはないと言っていましたが、知っているだけでも驚きです。シンガポールの地下鉄では、「No Durian」の表示があるくらい、匂いの 強い果物です。好き嫌いの分かれる果物ですが、「果物の大様」と言われていることを問紹介しました。

・シンガポールのホーカーセンターのような屋台もアジアの大きな特徴であることを説明しました。安くて気軽に飲食できる雰囲気があり、人が多く、ごちゃごちゃしている雰囲気は東南アジアの風景の特徴で、屋台が東南アジアの空気感を最もよく象徴していると伝えました。これは私自身が東南アジアで一番感じている特徴で、この「空気感」はことばで説明しても説明し切れないので、ぜひ、将来、実際に東南アジアの国々を訪問して味わってもらいたいと言いました。「空気感」とは、匂いや暑さからくるものですが、そこに解放感があります。具体的に詩人の金子光晴の『西ひがし』の文章を紹介し、また、私自身の俳句も披露し、バナナさえあれば何とでも生きていける、という東南アジア(特にフィリピン)の人々の生き方についても述べました。

・生徒の一人から、「空気感」を味わうため、ぜひ仲さんがお金を出して我々を連れて行ってください、との発言がありました。

3. 講演後の感想:

 授業のはじめに生徒の一人が代表して私を紹介してくれました。また、授業の終わりにも生徒の一人が代表してカードをくれました。そこには、「今回の話を聞いてアジアの国々についてもっと深く知りたいなと思いました」と書いてありました。ほんとうにお金さえあれば、生徒のみなさんと一緒に東南アジアを訪問したいと思いました。

私自身、中学二年生のときを思い出してもシンガポールやマレーシアといった国のことは何も知りませんでした。百聞は一見にしかず。国を知るには、実際に行って、その国の人や風物に触れるのが一番です。将来、実際に訪問する機会があればいいなと思います。そのとき、私のいう「空気感」を一人一人が自分で感じ、どういう感想を持つか聞いてみたいです。

今回、ご尽力頂いた真光寺中学校の関係者に心から感謝いたします。また、「国際人をめざす会」の皆様よりこのような機会をいただきましたことにあらためて感謝申し上げます。特に、当日、菊池様、阿部様には昨年同様、たいへんお世話になりました。また、佐瀬様にも手続き等ご支援いただいており、あらためて感謝いたします。

生徒感想文 HP掲載(仲講師)