オンラインによる出前授業が湯澤三郎講師により初めて実施されました。

3月11日、オンラインによる出前授業が初めて実施されました。
出講先は横浜市立矢部小学校、卒業前の6年生を対象に「世界で僕らしく、私らしく」というテーマで、湯澤三郎講師を派遣致しました。

湯澤三郎講師略歴: 1940年生まれ。早稲田大学政治経済学部卒。ジェトロ理事、エルサルバドル大使、エジプト通産大臣輸出振興アドバイザーを歴任、現在 国際貿易投資研究所理事長。海外駐在体験国:スペイン、米国、ブラジル、ペルー、エルサルバドル、エジプト。

以下、湯澤講師の出講報告です。

Zoom方式によるオンライン講演

対象;矢部小学校6年生約90名(3教室でスクリーン画面により)

講演経緯と趣旨

2月下旬の某日、講師派遣委員長の阿部 清氏からお電話で矢部小へのオンライン講演の可能性についてご相談を受けました。「お役に立つなら」とお返事して、その後のやりとりで①生徒には講演のレジュメを配布する②講演内容のあらましを共有資料として画面で提供する③リアルで行っていた生徒への呼びかけはやめる、などが決まりました。実施は卒業を控えた3月11日13;45(後に13:40に変更)から45分間とし、冒頭阿部氏の挨拶、最後に担当教師の締めのお言葉などが決まりました。

阿部氏は矢部小学校の「きずな」の会代表として学校、生徒、家庭と地域の絆を結ぶためにご活躍されています。そのユニークな活躍から「きずな」の会は文部科学大臣賞を受賞されています。今回のコロナ禍のなかで何をしたらよいか、特に卒業生のために何かできないかと考えた末の結論が、今回のオンライン講演会でした。勿論、学校、生徒さんにとって初めての経験です。前日の予行演習では幸い無事に終了しました。

扨、講演の内容です。当日までの時間もあまりなく、これまでほぼ毎年お話ししてきた内容を軸にアップデートし、タイトルを「世界で僕らしく、私らしく」としました。これは章の生徒さんの課題だけでなく、大人の誰でもが目指していい目標です。振り返ると昔、大手企業の部長さん達の研修会でお話ししたことと、話し言葉が違うだけで内容は殆ど同じだと思い出しました。

勉強は一言で言えば、大宇宙と人間を知ることに尽きます。しかし、人間は小宇宙と言われるように、人間のことを深く知るほど宇宙を知ることになります。それほど人間は深く複雑です。だから、自分を知っているようで、実は知らない部分の方が多いのです。だから、他人から自分を教えてもらう。本を読んで人を知る。自分を知れば知るほど自分の好きなこと、面白いと思うことが段々分かって来る。中学で広がる学科は、自分をより良くしるきっかけを発見するためといってもいい。興味ある事はいくらやっても苦しさを感じない。それぞれが皆違うことに意味がある。大自然が教えてくれることは色々だけど、その一つは「みんな違う」ということ。

違いのなかに意味があるということ。歌がうまいのに越したことはなく、話し上手に越したことはないけれど、みんなが同じように歌や話し方が上手であるはずがない。話し上手より、僕は「聞き上手」の方が今のスマホ時代はとても大事だと思う。みんな話したがり屋で目立ちたがり屋。そのなかでじっくりと聞ける人は素晴らしい才能の持ち主だと思う。

人は必ずその人でなければできない役割を持っている。その役割はみんな違う。スプーン一杯の土に数十億の微生物がいて、その中から大村 智さんという学者さんがアフリカの風土病オコンセルカをやっつける微生物を見つけてノーベル賞をもらった。今地球上に75億人がいれば、人間一人一人に必ずその人でなければできない役割があるはず。土中にいる線虫という1ミリにもならない透明な虫の役割を話そう。線虫は野菜の害虫だとして土中に殺虫ガスを噴射して駆除したと思ったら、今度は紋羽病という駆除不能の病気が野菜や果樹を襲うようになった。調べてみたら、実は線虫がその紋羽菌を食べていたけれども、線虫を駆除したために紋羽菌が猛威を揮うようになった。害虫だろうと思い込まれていた線虫が実は大事な役割を果たしていた。小さな、小さな線虫でさえ、そうした大事な役割を果たして自然界の秩序維持に貢献していたわけだった。

僕らだって必ず一人一人役割があるはず。それを探し出して行く始まりが中学なのだ。

日本の中だけでなく、世界にその役割があるかもしれない。

今日本は世界の人々、国々とのつながりを無視しては成り立たなくなっている。会社のビジネスは思いがけないところで世界とつながっているし、ラーメン屋さんも床屋さんも外国へ店を出す時代になってきた。どこでどんな仕事についても外国と繋がっている。

日本にいる時と比べると、外国でびっくりすることが多い。それが自分のなかにある何かを発見するきっかけになることがある。中村 哲さんという福岡のお医者さんは、パキスタンとかアフガニスタンの村で診療した時、村人たちの栄養不足が病気の原因だと分かった。

その経験が中村さんの生き方を変えた。栄養不足を直さなければいくら診療しても意味がない。「よし、村に畑をつくろう」と思った。砂漠、土漠を畑作地にするには、川から水を引いて灌漑しなければならない。中村さんはショベルカーやブルドーザーの運転や用水路の建設技術をゼロから勉強した。アフガニスタンの村人たちに説明して熱い気候の下、用水路の建設に取り掛かった。そして30年かかって25キロの用水路を完成し、その周囲の村々一帯は素晴らしい畑に様変わりした。残念ながら最近、中村さんはテロリストの銃弾に斃れた。アフガニスタン政府が中村さんの肖像を切手にして偉業を称えている。

中村さんという福岡のお医者さんが、アフガニスタンで土木工事を完成して村々の農業を起こし、豊かにして健康に貢献するかけがえのない役割を果たした。

日本は最近、家庭の収入も支出も減り気味でやや元気がない。人口も205か国中195番目という増加率の低さだ。政府の借金も世界で断トツに大きい。これから働く若い人たちにぜひ日本を元気にするよう頑張って欲しい。

自分だけでできることは少ない。必ず周囲の人たちと一緒に働くことが必要になる。一緒に働いて成功するために大事なのは、お互いのコミュニケーション。人はそれぞれ違うけれど、同じ部分を見つけてその部分を大きくしてゆく努力がコミュニケーションだ。お互いの違いの中から発見、アイデアが出てくる。

日本人は外国人と色々違うと言われる外国人から見るとその違いの中に、素晴らしいものを発見して驚いている。日本を訪れる外国人はみな、清潔、正確、安全、便利、親切、おいしいことに好感を持って、また来たいという人が多い。その印象を支えているのは、政治家や偉い人たちではなく、新幹線の掃除係り、スーパーやコンビニのレジ係り、タクシーの運転手、ゴミ収集車といった普通の人たちだったりする。その仕事仕事に一生懸命で、

自分の役割を大事にして働いている姿が感動を与えている。

中学は将来の夢、希望の第一歩。夢、希望はあきらめずに努力を続ければ、必ず自然はかなえられる様に応援してくれると確かな人が言っている。(カーネギー、稲盛和夫)日本では昔から「お天道さま」と言っていたけど「隠れて悪いことをしてもお天道さまはちゃんと見てるからね」と言われたことがないかな。でも「良いことを誰も見ていないところでしてもお天道さまはちゃんと見ててくれる」と考えてもいいはず。信じるか信じないかは自由だけど。

将来何になりたいか、夢と希望を実現する時に大事なことがある。

それは何になりたいかと同時に、「どういう人になりたいか」を考えること。それを考えていないで偉くなった人が大失敗する例は沢山ある。これは年齢に関係なく、だれでもいつからでも始められること。僕がこれまで出会ったなかで素晴らしい人が矢張りいた。なぜ素晴らしいのか考えた結果、その人たちは皆「爽やかで優しく、逃げず諦めない」人たちだったと気が付いた。そのため第一歩になる次のヒントが参考になるかもしれない。

身心のトレーニントで体を鍛えるのはよくあるし、分かり易い。では心のトレーニングはどうやるのだろう。体は栄養をつけて適度の体操で強くなる。心は何を食べて育つのだろう。僕の答えは「心の栄養となる食べ物は笑顔と優しさ」。取り込みたい場合はまず自分から笑顔を優しさを誰かに運ぶこと。そうすると必ず、その笑顔と優しさがもっと誰かから自分に運ばれてくるようになる。

凡そ以上の話をしたつもりでしたが、終わってから振り返ると、今回もまた「これを言い忘れた」「あれも言わなかった」ばかりの反省です。生徒さんたちが言外の意味をよくくみ取ってくださったことを願うばかりです。

出前授業のレジュメ資料   矢部小学校オンライン 2011.03.11

生徒感想文①  生徒感想文②   矢部小の先生のコメント